落ちかけた橙色の太陽が校舎の影を長く伸ばす。

 私は眩しい西日に目を細めながら帰り道を急いだ。

 結局、私は白浜くんの取材ができないまま放課後を迎えてしまった。

 私は学校を出ると、手元の腕時計に視線を落とし、家へと帰る足取りを速めた。

 私が住むのは高校のオンボロ学生寮。

 水の出も悪いし、床は畳だし、お風呂もトイレも狭くて不便。でも部屋には小さな台所が付いている。

 家賃が安くて高校から近いから私は迷わず寮にしたんだけど、住んでいる人は私も含め二、三人くらいかな。

 寮の規則はそんなに厳しくないんだけど、一応門限はあるから早く帰らないと。

「ふう、間に合った。……って、あれ?」

 私が寮に駆けこみ肩で息をしていると、ふと部屋の前に人が倒れているのが見えた。

 細身の長身。
 少しクセのあるサラサラの黒髪。
 色白の肌。
 人形みたいに整ったこの顔は――。 

 これってもしかして白浜くん?

 私は信じられない気持ちで目をごしごしとこすった。

 なんで白浜くんが私の家の前で寝てるの?

 事故? 病気?

「白浜くん、白浜くんどうしたの?」

 声をかけてみたんだけど、返事がない。

 どうしよう、まさか死んでる――⁉

「白浜くん、白浜くん、起きてよ!」

 怖くなった私は必死で白浜くんの名前を呼び、体を揺すった。

 三回ほどゆすったところで、大きな黒い瞳がパチリと開いた。

 ――良かった。生きてた。

 ほっと息を吐く。

「……ん」

 焦点の定まっていない視線が、波のようにゆらゆらと宙をさまよう。

 うわ、キレイな瞳。

 私は間近で見る白浜くんの顔のあまりの造形の良さにぎょっとしてしまった。

 イケメンだとは知っていたけど、近くで見るとこんなにすごいとは思わなかった。