「これなんかどう?」

 アクセサリーコーナーで白夜くんが金色の指輪を見せてくる。

「ゆ……指輪」

「金と銀ならどっちがいい?」

「どちらかというと……銀……かなあ? でも、本当に買うの?」

 私がたじろいでいると、白浜くんが首をひねる。

「あれ、嬉しくないの?」

「いや、まだ指輪って年じゃないし……第一学校につけていけないじゃん。休日だってそんなにしょっちゅう出かけるわけじゃないし……」

 それに値段だってけっこうするし。

 私が答えると、白浜くんは不満そうに指輪を売り場に戻した。

「ふーん。それもそうか。花にはもっと実用的なもののほうがいいかな」

 顎に手を当て、ぶつぶつ呟く白浜くん。

「そうそう、私って花より団子タイプだし」

 私はそう言いながら店内を見回してふと気づく。

 秋物のTシャツがセールになってる。

 せっかくだから見ていきたいな。

「あ、じゃああのTシャツでいいよ。実用的だし」

 私はTシャツ売り場を指さした。

「えっ、本当に良いの」

「うん、あれでいい」

 二人でTシャツ売り場へ向かう。

「うーん、なかなか良いのがないなあ。もっとシンプルなのが良いんだけど」

 私がワゴンの中のTシャツを漁っていると、白浜くんが白と黒のTシャツを手にやって来た。

「こっちはどう? 奥にあったんだ」

 値段を見ると、セール品ではないけどそんなに高くもない。

「いいね、シンプルで合わせやすそう」

 私が言うと、白浜くんは試着室を指差した。

「ちょっと試着してみなよ」

「うん、行ってくる」

 私は二枚のTシャツを手に試着室へと向かった。