私が恐る恐るノートのページをめくると、『学年一位になる』『生徒会長になる』『一人暮らしをする』などの項目が小さなノートにびっしりと書かれていた。

「この赤丸は?」

「これはすでに達成した項目」

「へえ、すごい、いっぱい達成してる……」

 私がパラパラとノートをめくっていくと、不意に『好きな人に告白する』『彼女を作る』『彼女にお弁当を作ってもらう』『彼女と映画を見に行く』という項目が目に入ってきた。

「これもやりたいことリストだったんだ」

「はは、バレた?」

 無邪気に笑う白浜くん。全くもう。

 さらにノートをめくっていくと、段々と実行できていない項目が増えてきた。

 『彼女と一緒に服を選ぶ』
 『彼女とデートで観覧車に乗る』
 『彼女と一緒にクレープを食べる』
 『彼女とキスをする』

 白浜くん、キス……したいんだ。

 胸がとくんと音を立てる。

 そうだよね。

 男子高校生だし、年頃だし、彼女もいるし……そうだよね。

 かあっと顔が熱くなる。

 私が動揺していると、白浜くんはしれっとした顔で言った。

「その辺は最近書いたからまだ達成してないんだ。だからもしよかったら付き合ってくれないかな?」

「う、うん……あ、そうだ。次の休みに、港のショッピングモールに行くのはどうかな。あそこの観覧車、有名でしょ。それに服屋さんもあるし、クレープ屋さんもあるし」

 私の提案に、白浜くんはぱあっと顔を輝かせる。

「いいね、じゃあ、土曜日に行ってみよう」

「うん」

 私は心に忍び寄る闇から目をそらし、とりあえず目の前の約束に飛びついた。

 とりあえず今は白浜くんと人生を楽しむことだけを考えよう。
 
 悲しむのは――その時が来てからでも遅くない。