「……花」

「だって私、白浜くんのことが好きだもん」

 私は、自分でもびっくりするぐらいはっきりとした口調で言った。

 だってあの文化祭の日、私は気付いてしまった。

 どんなに辛くても、好きになることはやめられないって。

 理屈じゃない。私は白浜くんのそばにいたいんだって。

 そばにいられる時間が短いのならなおさら。

 だから――。

「私は最後まで白浜くんのそばにいたい」

 たとえそれが明日だろうと、何十年か先だろうと。

 私は声を振り絞って言った。

「……ありがとう」

 白浜くんは、少しほっとしたような笑顔を見せた。

「それでね、実は俺、自分がいつ死んでもいいように以前からこんなものを作っていたんだ」

 そう言うと、白浜くんは一冊の青い小さなノートを見せてくれた。

 表紙には

 『やりたいことノート』

 と、白浜くんらしい綺麗で几帳面な文字が書かれている。

「やりたいことノート?」

「そ、死ぬ前にやっておきたいことリスト。例え寿命が短くても、少しでも充実した毎日を過ごせるようにね」

 白浜くんが少し照れたように説明してくれる。

「これ、私が見てもいいの?」

「いいよ」

 白浜くんがノートを手渡してくれる。