はあ……。

 結局私は、一睡もできずに朝を迎えてしまった。

 辛かった。

 でも本当に辛いのは白浜くんのほうだよね。

 自分が死ぬかもしれないだなんて、考えただけで怖いから。

 そう考えると、私は自分が辛いことを表に出すことはできなかった。


 私はお昼休みに白浜くんと一緒に生徒会室にやってきた。

 わざと明るい声を出し、白浜くんににスマホの画面を見せる。

「あのさ、昨日白浜くんの病気のこと検索してさ、そしたら二十歳以降も生き延びたって人たくさん見つけたよ。この人とか……この人かさ!」

 白浜くんは黙って首を横に振る。

「花、俺だって親から病気のことを聞かされた後、同じ病気の人のこといっぱい調べたんだ。この人達みたいになれたらいいけど、そうじゃない人もたくさんいる。大半は早死にする運命なんだ。そこから目をそらしちゃいけない」

「ご……ごめんなさい」

 私は頭を下げた。

 そっか、私が調べるようなことなんて、白浜くんはもうとっくに調べているよね。

 病気に焦って困惑して――そんな段階はもうとっくの昔に通り過ぎて、白浜くんは病気を受け入れているんだ。

 私は下を向き、ぎゅっと拳を握りしめた。

 なんて馬鹿なんだ、私は。

 でも私はそんなに簡単に病気のことを受け入れられないよ。

「花、辛いんだったら別れてもいいよ」

 白浜くんの言葉に、私ははっと顔を上げた。

 別れる? 白浜くんと?

 私は白浜くんと別れることを想像してみた。

 白浜くんとはこれ以上深く関わらず、距離を撮って過ごす。

 そうすればいつか白浜くんが亡くなっても「ああ、あのほんの数か月だけ付き合った人ね」で済むかもしれない。

 だけど――。

 ううん。

 きっと今白浜くんと別れたら、ふとした拍子に後悔するに違いない。

 どうしてもっと一緒にいなかったんだろう。

 やれることがきっとたくさんあったはずなのにって。

 私は、後悔だけは残したくなかった。

 私はきっぱりと首を横に振った。

「それは嫌」