……き、気まずい。

 二人の間に少しの間沈黙が訪れた。

「あの……話って……」

 仕方なく私が切り出すと、白浜くんはグラスの淵にじっと視線を落として話し始めた。

「実は俺、来月手術することになったんだ」

「えっ?」

 予想もしていなかった一言に、私の頭は真っ白になった。

 話って、別れ話じゃなくてその話だったの?

「手術って――白浜くん、どこか悪いの?」

 私は恐る恐る尋ねた。

「うん。前に、小さいころの手術の話はしたよね?」

 そういえば、閉会式の時もそんなことを言っていた。でも――。

「うん、聞いた。心臓の手術をしたって。でも小さいころに手術をして治ったんじゃないの?」

 私が尋ねると、白浜くんは静かに首を横に振った。

「いや。治ったわけじゃない。病気の症状を遅らせることはできても、今の医療技術では完治はしない。一生付き合っていかなきゃいけない病気なんだ」

 白浜くんは静かに話し始めた。

 その後の話は、目の前がぼんやりとして、頭の中が真っ白になったのでほとんど覚えていない。

 かろうじて覚えているのは、白浜くんの病気は全身の臓器――特に心臓の機能が徐々に衰える生まれつきの難病だということ。

 日本に百人もいない希少な病気で、治療法は確立していないということ。

 約八十%の患者は二十歳になる前に亡くなるらしいということ。

 亡くなる……?

 白浜くんが?

 体が弱いとは聞いていたけど、まさかそんなに酷い病気とは思っていなかった。

 だって、目の前の白浜くんはとても元気そうで、とてもそんな深刻な病気を抱えているようには見えなかったから。

「……で、でも手術をすれば助かるんでしょ?」

 私がすがるような思いで白浜くんに尋ねると、白浜くんは静かに首を横に振った。

「いや、手術をすれば症状はだいぶましになるらしいけど、それでも根本的な治療にはならないらしい」

「そんな……」

「俺の場合、小さいころに二回手術をして、それからずっと症状が安定してたからすっかり油断してた。でも最近、急に心臓が痛んだり倒れたりすることが多くなって――」

 白浜くんが言うには、最近妙に付き合いが悪くなったのは、体調が悪化し、頻繁に病院に行っていたかららしい。