残暑厳しい季節も終わり、季節は晩秋。

 紅葉が一気に色づき始め、頬を撫でる風には冬の足音が近づいてくる予感があった。

 『ねえ、今日の晩ご飯うちに食べにくる? またお鍋にしようかと思うんだけど』

 私は白浜くんにそんなメッセージを送った。

 だけど――。

 『ごめん、今日はちょっと用事があるから』

 返って来たのはそっけない返事だった。

「またか……」
 
 私はスマホをベッドに投げ捨てた。

 最近、白浜くんの様子が少しおかしい。

 晩ご飯の誘いは三日連続で断られてるし、ここ一週間一度も一緒に帰ってない。

 学校で会ってもなんだかそっけない態度だし――。

 どうしたんだろう。

 ひょっとして、付き合ってみたら思ってた感じと違って飽きられたとか?

 ……うーん、ありうるかも。

 私がゴロゴロとベッドに転がりながらそんなことを考えていると、白浜くんから追加のメッセージが来た。

『その代わり来週の日曜日会えない? 大事な話があるんだ』

 心臓がドキリと鳴る。

 大事な話――たぶん別れ話だろうな。

 何となくそんな予感がして、胸がチクリと痛んだ。

『うん、いいよ』

 心のこもっていない返事を返し、私はベッドに横になり自分の部屋の天井を見つめた。

 心に夜の帳が下りてきたみたいに、ずうんと気持ちが重くなる。

 やっぱり最初から無理だったんだろうな。

 私みたいな庶民と完璧王子の白浜くんが付き合うだなんて。

 最初から釣り合ってなんていなかったんだ。

 そう自分を納得させようとしたけど、胸の痛みは収まらなかった。