「ねえ花」
不意に白浜くんが振り返る。
冷たい風が吹いて、背中をゾクリと撫でる。
「もし俺がお父さんみたいに死んじゃう運命だとしたらどうする? 辛い思いをするくらいなら別れる?」
ザワザワと街路樹が揺れる。
そんな風に質問をした白浜くんの顔は西日で眩しくてよく見えなかった。
私は答えた。
「何馬鹿なこと言ってるの」
「いや、もし、だよ」
白浜くんが慌てる。
「もしも、の話」
私は足元の小石をコツンと蹴り、答えた。
「もし白浜くんが死んじゃうとしても――私は別れないよ。言ったでしょ。どんなに辛くても、好きになることはやめられないって。一緒にいたい」
「そっか」
白浜くんが微笑む。
「俺も。ずっと花といたい」
その言葉に、私はほっと胸をなでおろした。
二人の影が長く伸びる。
夕日に照らされた白浜くんは、キラキラ橙色に輝いて、街の人混みの中でもくっきりと浮き上がって見える。
これがきっと、好きってことなんだろうな。
――あ、そうだ。写真。
私がデジカメを探していると、白浜くんはパシャリと私をインスタントカメラで撮った。
「……もう」
相変わらず不意打ちが好きなんだから。
私も負けずに白浜くんの顔を撮り返した。
私たちの日々は幸せで満ち溢れていた。
こんな日々がずっと続くものだと信じて疑わなかった。