私が首を傾げていると、白浜くんが不思議そうに尋ねてくる。

「どうしたの、うんうんうなって」

「えっと――うちのお父さん、お母さんのこと、思わず写真に撮りたくなるような存在感があったって言ってたけど、でもこうしてみると、お母さん、特別美人なわけでもないしどうしてかなって」

 すると私たちの会話を聞いていたお母さんがケラケラ笑う。

「あらやだ、お父さんったらそんなこと言ってたの?」

「うん」

 お母さんは、自分の若いころの写真を見つめ、遠い目をした。

「確かに、お父さんはよく私の写真を撮っていたわ。何だか不思議と写真に撮りたくなるんですって。でもそんな話、初耳だわ」

 お母さんが言うと、白浜くんはじっとお母さんの写真を見つめた。

「……俺は少し分かる気がするな」

「えっ?」

 白浜くんが?

 私がキョトンとしていると、白浜くんは照れたように笑った。

「花さんのお父さんがお母さんをよく撮っていたのは、好きだからですよ。好きだからで、周りからくっきりと浮かび上がったみたいに特別に見える。何度も写真を撮りたくなるんです」

「あら、そうかしら」

 お母さんの顔が真っ赤になる。

「……そうだといいけど」

 その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。

 白浜くんは私をじっと見つめる。

「俺も気がつけば花のことばかり見ていたから」

 私はびっくりして目を見開いた。

「本当に? まあ、新聞部で目立つしね」

 いつも大きいカメラ持ってて目立ってたって白浜くんも言ってたし。

 だけど、白浜くんは少し照れたように遠くを見つめた。

「違う違う、新聞部だからじゃない。ほら、入学式の時に俺の落としたハンカチを偶然拾ってくれただろ。その時から」

 えっ。

 入学式!?

 私は頑張って遠い記憶を引っ張り出そうとした。

 誰かのハンカチを拾ったような記憶はある……ような気がする。

 でもその相手の顔はどうしても思い出せなかった。

「そ、そんなこと、あったような……なかったような?」

「あったよ」

 少し怒ったように言う白浜くん。

「その時から俺はこの人を彼女したいって思ってた」

「嘘。そうだったの!?」

 まさか白浜くんがそんなに前から私の事を好きだっただなんて思いもしなかった。