「はあ、これ食べ終わったらまた白浜くんのこと探しに行かなきゃ」
私が呟くと、沙雪ちゃんが目をキラキラと輝かせた。
「えっ、白浜くんのこと探しに行くの⁉ いいなー、私も行きたい!」
あのね、遊びじゃないんだよ?
でもよく考えたら私より、白浜くんファンの沙雪ちゃんのほうが白浜くんの居そうな場所を知ってるかもしれない。
それに、ひょっとしたら白浜くんも私一人で行くよりより沙雪ちゃんみたいなかわいい子が一緒にいるほうが話も聞いてくれるかもしれない。
「じゃあ、一緒に行く?」
「うん!」
私たちはお弁当を食べ終わると、さっそく白浜くんにインタビューすべく校内を探し回ることにした。
「白夜くん、どこにいるんだろう」
二人でがらんとした白い廊下を歩く。
まだまだ残暑が厳しく、日なたは熱いけれど、校舎の日陰はひんやりと冷たい風が吹いてきて気持ちがいい。
私たちはきょろきょろと辺りを見回し白浜くんの姿を探した。
教室にもいないし、生徒会室にもいない。
となると後は……。
私がカメラを手にキョロキョロしていると、急に沙雪ちゃんが私の腕を引っ張った。
「花、あそこ!」
見ると、渡り廊下の端に白浜くんと……背の高い肩までの茶髪の女の子がいる。
「あれは……一年の高倉さん?」
沙雪ちゃんがつぶやく。
「高倉さん。あの子が?」
私も名前だけは知ってる。
なんでも読者モデルをやっていて、S N S でもフォロワーの多い人気インフルエンサーなんだって。
近くに行き、柱の陰から様子をうかがうと、高倉さんはカバンから白い包みを取り出し、白浜くんに渡した。
「あ、あの、先輩、ずっとファンでした。もしよかったらこれ手作りのクッキーなのでたべてください」
へえ、あんな可愛くて有名な子も白浜くんのファンなんだ。
私たちがびっくりしながら見守っていると、白浜くんは眉一つ動かさずに、クッキーを突き返した。
「悪いけど俺、誰かの手作りって食べられないから」
「ご、ごめんなさい!」
泣きながら去って行く高倉さん。