「そっか、そうだよね」

 納得しかけた私の肩に、白浜くんはそっと手を回して耳元でささやいた。

「ほら、母さんがいたら彼女とイチャイチャもできないし」

「えっ……!?」

 い……イチャイチャ!?

 イチャイチャって何!?

 私がパニックになっていると、白浜くんはプッと噴き出した。

「相変わらず可愛いね、花」

「もう、人のことをあまりからかうんじゃありません」

 私は白浜くんの手の甲をペチリと叩いた。

 でもまあ、人をからかってこんなに楽しそうに笑うだなんて、少し前の白浜くんじゃ考えられなかったな。

 私は真っ白な湯気とキムチの香り越しに白浜くんを見つめた。

 最近の白浜くんは、妙に私にべたべたしてる。

 私に気を許しているからっていうのもあるかもしれないけど、どうもそういう理由だけじゃないようにも思える。

 なんとなくだけど、私と漫画やドラマで見るような理想のカップル像を演じようとしているんじゃないかと思えてならない。

 白浜くんがそれまで理想の生徒会彫像を演じてきたように――。

 私が見たいのは本当の白浜くんなのに、本当の白浜くんはいつまでたっても触れそうで触れない。

 この白い湯気の奥にいるような気がしてならなかった。

「あ、そうだ」

 ……なーんて、私の考えすぎかもしれないけどね。