文化祭は大盛り上がりのうちに幕を閉じた。

 私と白浜くんはというと、誰にも知られずひっそりと偽のカップルから本物のカップルへと昇格した。

 最近では、二人歩いていてもヒソヒソと噂をする人はいないし、日報が何を書こうが以前ほどの盛り上がりはなくなった。

 ありていに言うならば、私たちにようやく日常が戻ってきたというところだろうか。

「はあ、やっぱり家は落ち着くなあ」

 白浜くんが私の部屋の絨毯に横になる。

 私は白浜くんの足をわざと踏んずけながら言った。

「白浜くんの家じゃないでしょ」

「そうでした」

 冗談だか本気だか分からない口調で白浜くんが笑い、私に寄りかかって来る。

 さらり。

 少し伸びた白浜くんの前髪が私の肩にかかる。

 甘酸っぱいようなくすぐったいような不思議な気持ち。

 全くもう。

 タイマーの音が鳴って、私はぐいと白浜くんの体を押し返した。

「あ、お鍋できたみたい。白浜くん、鍋敷きそこに置いて」

 私が言うと、白浜くんはまな板の横に置いてあったコルク製の鍋敷きを取った。

「これでいい?」

「うん」

 私は白浜くんの敷いた鍋敷きの上に、ぐつぐつと湯気を上げる土鍋を置いた。

「じゃーん、今日の晩ご飯はキムチ鍋でーす」

 私が土鍋の蓋を開けると、白浜くんが嬉しそうに拍手をした。

「やった。俺キムチ鍋大好き」

「それじゃあ食べよっか」

「いただきまーす」