「いやいや、私たち、そういうんじゃないから」

 慌てて否定すると、沙雪ちゃんはさらに身を乗り出してきた。

「じゃあさ、サッカー部の幸村くんはどう? イケメンじゃない? それともラグビー部の佐川先輩みたいにたくましくてマッチョなほうがタイプかな」 

「いや、私、男の人に興味ないから!」

 私は首を横に振って話を強制終了させた。

 沙雪ちゃんはしゅんと肩を落とす。

「ご、ごめんね。ただ私は花と恋バナできたら楽しいかなって思って……」

 私も慌てて沙雪ちゃんに謝った。

「こっちこそごめん。別に怒ってないよ。ただ今は私、部活とか忙しいからさ」

 そう。

 私が恋愛する気にはなれないのは、ビビっと来る人がいないっていうのもあるんだけど、今は恋愛よりももっと大事なことがあるから。

 それはお父さんと同じ新聞記者になること。

 そのために私はお父さんが卒業したこの学校で新聞部の記者として頑張ってる。

 だから恋愛は――私にとっては二の次なんだ。

「そうなんだ。うん。でもごめん。私、いつも余計なこと言ってお友達のこと怒らせるから……」

 下を向いてうつむく沙雪ちゃん。

「大丈夫だよ、気にしてない」

 私は沙雪ちゃんの肩をポンポンと叩いた。

 これは最近知ったことだけど、実は沙雪ちゃんは「ぶりっこ」とか「男好き」とか言われて一部の女子から嫌われているらしい。

 それを本人も知っていて気にしているのだ。

 私は女子力もないし、鈍感なたちなので沙雪ちゃんを嫌う人たちの気持ちは分からない。

 どちらかというと、沙雪ちゃんみたいに、あの人がかっこいいとか好きとか素直にはしゃげるのっていいなと思う。

 女子高生らしくて可愛いし、学校生活も楽しそう。

 私にはないものを持っていて、眩しくて、キラキラで、羨ましいなと思う。

 私はそういうのとは無縁だから……。