次にウィリアムが目を覚ましたのは病院の寝台の上だった。
そしてそのまましばらく入院することになった。
そのあいだに母がウィリアムにこれまでの経緯を話してきかせた。

ウィリアムはカプセルに入ってしばらくは意識があったようだが、数時間後に昏睡し病院に運ばれた。
体に特に問題はなく、原因は不明で昏々と眠り続けた。

研究結果は明かされず、ウィリアムが意識を失った時点で中止となったそうだ。
長髪の男と眼鏡の老人の姿はなく、母にきいてもわからないと首を振るばかりだった。
代わりに国の調査員や警察関係者が事情聴取にやって来た。
「研究所でどんなことをしたのか?」
「眠っているあいだ何か感じたか?」
「体に違和感はないか?」
ウィリアムはカプセルに入ったこと、夢を見たことなどを正直に答えていった。
国が進めていた研究なので国の関係者に話しても問題はないとウィリアムは思った。
調査員の手によってめちゃくちゃな夢の内容も漏らさず記録された。

入院中、ウィリアムは退屈していた。
頭は冴えて覚醒しているのに動けなかったからだ。
一年近く眠っていたおかげで体中の筋肉は落ちきって歩行はおろか食事もまともにできなかった。
文字を書いて、本を読んで、食事をして、歩いて。
意識せずに行っていた日常の動作がこんなに困難になるとは思ってもみず、それらを軽々とこなしていた以前の自分が嘘のようだった。
しばらくリハビリをして、ようやく退院することができたのが数日前だった。

「今日から同級生だね」
ドイが言った。
一年間学校を休んだおかげでウィリアムはもう一度五年生をする羽目になった。