地下から顔を出したウィリアムは眩しさに目を細めた。
「何かあった?」
顔を上げると目の前にルネの顔があった。
「何も」
ウィリアムは笑ってみせたがルネはまだ何か言いたそうにしていた。
「それより、それどうするんだ?」
ウィリアムはルネの脇に転がる卵型の球体を指さした。
「ああ、とりあえず私が持って帰るよ。明日ポールにも見せてみよう」
「いや、もうすぐ試験だし伝えるのはそのあとにしよう」
「わかった」

二人は持ち出した鉄梃と手提げ灯を片づけて資料室を出た。
ルネが球体をしまった鞄はポコリとまあるく膨らんでいた。
「また明日」
ウィリアムはバス停に歩いていくルネを見送ったあと背を向けて帰り道を歩いた。



五月の試験が終わるとウィリアムはポールを図書室に呼び出した。
そして四人が集まった。
「ドイ、どうしてここにいるんだ」
「なにそれ、私がいちゃいけないの? ルネが誘ってくれたんだから」
「そうなのか?」
ウィリアムはルネを見た。
「いけなかったか?」
「別にいいけど」
「それでさ、何なの?」
ポールがしびれを切らしたように間に入ってきた。
「卵のカプセルを見つけたんだって」
ドイがさらりといった。
「え!?」
目を丸くするポールの横で調子を狂わされたウィリアムはため息を吐いた。
「そうなんだ、ルイの書付けのカプセルと特徴が似てるんだ」
「どこにあったんだ?」
「資料室の地下だよ」
ルネが言った。
「ルネが見つけたのか?」
「ウィリアムが地下に気づいて、二人で入って見つけた」
「それで、どこにあるんだ?」
「私の家にある。それとできればもう一度あの書付けを見たいんだが、いいか?」
「わかった。じゃあ今度の休みに集まろう。そのときカプセルを見せてよ。じゃあまたここに……」
ポールが言いかけたその時ウィリアムの後ろから咳払いがきこえた。
「あなたたち、話をするならよそに行きなさい」
振り返ると司書の女がウィリアムたちを睨んでいた。