ルネとポールと別れたあとウィリアムは少し回り道をした。
丘の向こうには橙色の太陽が輝き、近くの家の中からは子どもの笑い声がきこえてきた。
それとともに鼻腔をくすぐる香ばしい匂いも漂ってきて、ウィリアムは川辺まで歩くとそのまま橙と群青がとけあうのを見つめた。
日がすっかり沈んでからもしばらく上を向いていたがそこには輝く星空が広がるばかりだった。
家に着くと母が居間から顔を出した。
「ウィル!」
母はウィリアムのもとにやって来て行く手を遮った。
「またこんな時間になって。もう遅くならないって約束したじゃない」
「ごめん、少し散歩してたんだ」
「次こそはちゃんと帰ってくるか連絡してちょうだい」
「わかってるよ。ところで叔父さんは?」
「まだ仕事よ」
母と叔父は三月に身内だけで式を挙げて婚姻した。
叔父はウィリアムが通学がしやすいように引っ越しはせずにこのまま暮らそうと言い、今ははこの家に三人で住んでいた。
「新婚なんだしもう少し早く帰ってきたらいいのに」
「仕方がないのよ。今仕事が立て込んでいるらしいから」
母の言葉にウィリアムは小さくため息をついた。
母はそんなウィリアムの顔を覗き込んだ。
「それでね、少し話したいことがあるの」
「なに、どうしたの?」
ウィリアムは答えを待ったが母は口ごもり、何度かはにかんだあとようやく切りだした。
「あのね、実はお母さん、赤ちゃんができたの」
「え、そうなの? おめでとう!」
ウィリアムがそう言って笑うと、母は嬉しそうに腹部を撫でた。
「あなたに兄弟ができるのね」
「少し前までは思いもしなかったよ。予定日は?」
「十二月頃よ」
丘の向こうには橙色の太陽が輝き、近くの家の中からは子どもの笑い声がきこえてきた。
それとともに鼻腔をくすぐる香ばしい匂いも漂ってきて、ウィリアムは川辺まで歩くとそのまま橙と群青がとけあうのを見つめた。
日がすっかり沈んでからもしばらく上を向いていたがそこには輝く星空が広がるばかりだった。
家に着くと母が居間から顔を出した。
「ウィル!」
母はウィリアムのもとにやって来て行く手を遮った。
「またこんな時間になって。もう遅くならないって約束したじゃない」
「ごめん、少し散歩してたんだ」
「次こそはちゃんと帰ってくるか連絡してちょうだい」
「わかってるよ。ところで叔父さんは?」
「まだ仕事よ」
母と叔父は三月に身内だけで式を挙げて婚姻した。
叔父はウィリアムが通学がしやすいように引っ越しはせずにこのまま暮らそうと言い、今ははこの家に三人で住んでいた。
「新婚なんだしもう少し早く帰ってきたらいいのに」
「仕方がないのよ。今仕事が立て込んでいるらしいから」
母の言葉にウィリアムは小さくため息をついた。
母はそんなウィリアムの顔を覗き込んだ。
「それでね、少し話したいことがあるの」
「なに、どうしたの?」
ウィリアムは答えを待ったが母は口ごもり、何度かはにかんだあとようやく切りだした。
「あのね、実はお母さん、赤ちゃんができたの」
「え、そうなの? おめでとう!」
ウィリアムがそう言って笑うと、母は嬉しそうに腹部を撫でた。
「あなたに兄弟ができるのね」
「少し前までは思いもしなかったよ。予定日は?」
「十二月頃よ」