学校にはルネにとって友人と呼べる人物は一人もいなかった。
ルネ自身一人でいることを好んではいたが、周りもあまりルネに近づこうとしなかった。
「ルネって変わってる」
はじめの頃、同級生達はそう言ってルネをからかった。
その言葉に対してルネが黙って反応しないでいると同級生たちは次第に離れいき、今では話しかける者すらいなくなってしまった。
ただ、ルネが反論せずに黙っていたのには理由があった。
実際ルネは同級生達と比べて頭ひとつ分背が高く、肌や髪や瞳の色もだいぶ薄かった。
そしてルネ自身自分について正確なことを知らなかった。
例えば誕生日や両親について。
施設の子どもたちは全員、年明けに揃って年をとっていたため誕生日という概念を持ち合わせていなかった。
施設では皆これが普通だったが学校へ通うようになるとその感覚が異常だということに気がついた。
同級生たちは誕生日や両親の話をした。
ルネもきかれたことがあったが、わからないと答えると怪訝な顔をされた。
そうやってしだいに様々な方向から「変わっている」という印象がつき、話に加われないでいたことも重なってルネは遠巻きにされて学校では浮いた存在となっていた。
そうして孤立していった。
集団生活を余儀なくされる中での独りは居心地のいいものではなかった。

「学校には通わなくちゃダメ?」
ルネは一度オカノにきいてみたことがある。
「どうした、楽しくないか? まさかいじめられているとか」
「ち、違うけど、勉強なら家でもできるよ」
「うん、家庭教師を雇うこともできるが……」
オカノは困ったような悲しそうな顔をした。
ルネはオカノのそんな顔を見てすぐに諦めた。
「やっぱりなんでもないよ」