【原文】

寸陰惜しむ人なし。これ、よく知れるか、愚かなるか。愚かにして怠おこたる人のために言はば、一銭軽かろしと言へども、これを重ぬれば、貧しき人を富とめる人となす。されば、商人あの、一銭を惜しむ心、切せつなり。刹那覚えずといへども、これを運びて止まざれば、命を終ふる期ご、忽に至る。

 されば、道人は、遠く日月にちぐわつをしむべからず。たゞ今の一念、空しく過ぐる事を惜をしむべし。もし、人来きたりて、我が命、明日は必ず失はるべしと告げ知らせたらんに、今日の暮るゝ間、何事をか頼たのみ、何事をか営まん。我等が生ける今日の日、何なんぞ、その時節に異ことならん。一日のうちに、飲食おんじき・便利・睡眠・言語・行歩、止む事を得え/ずして、多くの時を失うしなふ。その余りの暇幾ばくならぬうちに、無益むやくの事をなし、無益の事を言ひ、無益の事を思惟しゆいして時を移すのみならず、日を消し、月を亘わたりて、一生を送る、尤もつとも愚おろかなり。

 謝霊運しやれいうんは、法華の筆受なりしかども、心、常に風雲の思を観くわんぜしかば恵遠ゑをん、百蓮の交まじりを許さざりき。暫くもこれなき時は、死人に同じ。光陰何のためにか惜しむとならば、内に思慮なく、外に世事なくして、止まん人は止み、修せん人は修せよとなり。

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【現代版訳】

 ――朝、教室にて。

「ねえねえ、もし明日死ぬとしたらどーする?」
「急になに?」
「急じゃないわ!! 明日死なない保証なんてない! そう気付いたのよ! 明日の朝事故に遭うかもしれないし、隕石落ちてくるかもしれないし!」
「そうだね……? じゃあリリカはなにするの?」
「とりあえず、今からテーマパークに行って、美味しいもの食べまくるよ!!」
「学校サボって?」
「そうだよ! 明日死ぬんだから勉強なんてする意味ないでしょ!?」
「……それが、今日の課題を忘れた言い訳?」
「ウン」

 ――本鈴。

「さて。勉強しましょ〜」


 ※もし今余命一日だと言われたら、あなたはなにをしますか。昨日と同じ行動ができますか。