片道分の切符を握りしめながら誰もいない電車で1人ゆらゆら揺れていた。シン、と静まり返った電車の中で私はぼーっと窓の外を眺めていた。


真っ暗な外は流れるスピードがとても早く、どこを走っているのか分からない。エアコンがあまり効いていない蒸し暑い車内で、ため息を着いた。



「……何してるんだろ、私……」



右手に握っていた切符をポケットにしまい、変わりに昔撮ったボロボロの家族写真を取り出す。


両親に囲まれながら笑顔で写真に写っている私はまだまだ幼い。無邪気に笑っているその顔は、何度みても心が鷲掴みされたように苦しくなる。


……この時の私は知らない。


まだ、こんな絶望なことが待っているということを。



「……間もなくー、終点ー、終点ー……。お忘れ物がないように……」



写真を眺めていると車内アナウンスで終点のお知らせが聞こえてきた。ハッとして顔を上げるとゆっくりと電車が止まる。