次の日の放課後、わたしは部活終わりの先輩を呼び出した。体育館裏。

ベタだ。

だけど、体育館から近い場所で、人気のない場所――なんて言ったら、体育館裏しかないのだからしかたがない。


「好きです。……ごめんなさい。迷惑なだけかもしれないけど、だけどわたし、諦めたくないんです!」


相原先輩は、驚いたように口をぽかんと開けていた。


わたし自身も驚いていた。
まさか、わたしがこんな言葉を口にする日が来るなんて、思いもしなかったから。

「わたし、一年の春川っていいます! 知らないなんて、もう言わせませんから!」


しばらくぽかん顔をしていた相原先輩は、ふっと口元を緩めた。

――と思えば、堪えられないといった様子で笑い始める。


そして言った。



「俺、春川さんのこと、知ってたよ」


「〜〜っ」

声にならなかった。
嬉しかった、に似ている。だけど、どんな気持ちなのか、うまく言葉にできなかった。



じゃり、と足音が聞こえた。近い。


「……春川ちゃんは、おもしろくてかわいい後輩だよな。俺も知ってる」

どこからか現れた黒山先輩が、わたしを口説いた。



「黒山お前、いつからいたんだ……?」

「かわいい後輩の成長は、ぜんぶ見届けないと」

「つまり、最初からいたんですね」



ふたりのおひとよし先輩と、笑いあった。





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