「……そんなことが、あったんですね。」

ソウスケが話し終えるとしばらく2人とも黙っていたが、やがてアイが口火を切った。

「俺には向いてないらしい。でも、俺にはこれしかないんだよ…。」

どうしたらよかったんだろうな…、と息を吐くように呟いた。

「……今日の相手、どうしよ。」
「私も手伝います!」
「え?」

途方に暮れたように言うソウスケを見て、アイはあっけからんと言う。

「1人だと怖いかもしれません。でも、2人ならきっと大丈夫です!」
「………。」
「やってみましょう!ね!」
「いや、でも、手伝うっつったってお前戦えないだろ。」
「…うーん…。…あ、応援できます!頑張れーって!」

あまりにも単純すぎるアイにソウスケは思わず少し吹き出した。

「…まぁ、賭けてみるか。俺が折れるくらいのしつこさはあるからな。」
「し、しつこいって!そんなことないですよ!」

ムキになって否定するもの、ソウスケはからりと笑って立ち上がった。

「…さぁ、行くぞ…!」
「はいっ!!」

********

「き、緊張しますね…!」

市場の一番奥にある、闘技場にて。
この国の裏社会のメインである場所だ。
スタイルとしては円形闘技場で、沢山の部屋があり、あちこちで日々戦いが行われている。

VIPの戦いなだけありすでに観客が沢山入っている。基本観客はおしゃべりだったり賭け事だったりの目的なことが多いが。

アイはキョロキョロと客席や会場運営に走り回るスタッフを見渡し、ソワソワしながらソウスケに言う。

「え?なんで?闘うの、俺だよ?」

ソウスケはもうステージに上がっている。アイはギリギリまでここにいるつもりらしい。

「…そうですけど、でも、私もパワー送らなきゃなので!」
「はいはいそーですか。」

苦笑してはいるが、硬かった表情がほんの少し緩んだことにアイは気が付いていた。

そうこうしてるうちに会場のアナウンスが入る。

〈闘技がそろそろ始まります…!本日のメンバーは…ソウスケ VS サトル!〉

観客の歓声と共に相手である男、サトルが入る。
闘うというのに先ほどと変わらない革靴にスーツ姿。相変わらずにこやかな笑みを浮かべてゆったりと歩いてくる。

〈何度も聞いていらっしゃるとは思いますがカンペに絶対言えと書いてあるのでしゃーなしで言います!【闘技場のルール:殺人は不可。相手がギブアップまたは戦闘不可になった場合に勝負がつきます。武器の使用はなんでも可。闘技は基本ステージ上にて行ってください。観客の方は銃弾などが飛んでくる可能性もございますのでご注意ください。】はーほんと長いですよねぇ。〉

なんだかしっかりとアナウンス口調で明るく解説してる割にはやる気がなさげな感じである。会場の人もうんざりした口調のアナウンスに笑っている。いつものことなのだろう。

〈はーいそれではルールを守ればなんでもオッケー!レディー…ファイト!〉

掛け声がかかるがサトルは動かない。
ソウスケもサトルを警戒して、じっと睨むだけだ。

────これですでに、サトルの計画にソウスケは嵌まってしまった。