〈…ん?あ、あ〜。なんかコメント届いたんですけど…なになに?『闘技場での奪い合いに勝ってないのにソウスケなんかペア組んでね?』あー確かに。えーっと、じゃー今から奪い合いイベント始めまーす!〉
うおおおおおおおおお、と会場がまた違う種類の歓声に包まれる。すごい熱気だ。
「う、奪い合いイベントってなんですか!?」
「じきに説明がある。」
〈え〜月一回不定期に開催される〜奪い合いイベント!大抵は高価な宝石かペア組みたい強い人ー!などですが、今回はソウスケが攫ってきたと噂の王女、アイ!!あ、VIPは参加不可ですのでご了承くださーい!えーそれではー、よーい、スタート〜!!〉
アナウンスと共に客席から大量の人が傾れ込んできた。
「えっ、えっ、どうしましょう!ってかなんでこんなに人来るんですか!?」
「んー知らんけど王女持ってる〜って自慢できると思ってるか売りたいだけじゃね?」
「えぇ…っ!?」
「落ち着けって。…俺が奪えばいいだけだろ。」
そう言うと、ソウスケはアイを急に持ち上げ、力一杯上に放り投げた。
「ん?え、へ……っ!?……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
空中に放り出されたアイは混乱と驚きと恐怖で悲鳴をあげる。
ソウスケはそんなアイを放置して押し寄せて来る観客を見渡した。
観客は迷わずソウスケを倒そうとする。いくらソウスケだとしても、これだけの人数で押せば倒せるだろうと思っているのだ。
実際、いくらソウスケでもアイを抱えては太刀打ちできない。
…そう、アイを抱えていれば。
「…来いよ。バカども。」
ソウスケはとびきりの笑顔で観客を煽った。ステージにはすでに前列の方に座っていた観客が15人ほど入ってきていた。
殴りかかって来る男にそのスマイルのまま駆け出していき、両足で軽やかにジャンプ。そのまま顔面を蹴り飛ばし、その男を足場しにて後ろにバク宙。その振り下ろした足で後ろにいた男を蹴り、そのまま片足で着地して浮いてる足を回し蹴り。2人分の首に命中させた。
掴みかかってきたやつの腹に一発入れ、そいつの持っているバールを奪い取る。それを振り回して3人を一掃。そしてついでのように近くにいた相手をローキックで体勢を崩し、バールをぶつける。
(んー、これ、なんか飽きたしいっか。)
ソウスケはバールを投げ捨てると迫り来る観客にどんどん打ち込んでいく。ソウスケは基本肉弾戦派なのだ。
一方その頃アイは、闘技場の天井近くまで飛ばされていた。
(…あっ、ぶつかる…っ!)
そう危惧してぎゅっと目を瞑り、手のひらを天井に向けた。
しかしぶつかるスレスレでアイの体にふわりと浮く感覚。あ、落ちる、と思ったその時。やっぱり体が落下していく。内臓が浮いているような感覚と、頭から真っ逆さまに落ちているその状況にまたアイは悲鳴を上げた。
ソウスケは基本無心で戦う派なので余裕の様子。秒数的にそろそろ落ちて来る頃だ。相手を殴り倒しながらそんなことを考えるくらいには。
横から横蹴りをしてきた男の足を掴み、そのままを振り回す。これで5人ほどを一掃。
…相手の武器だろうが、相手本人だろうが武器にする。これがソウスケのやり方なのである。
ちょうどいいところでパッと手を離す。男は遠心力のまま吹っ飛ばされた。別のやつに真正面から殴りかかられるも避けて腹部に潜り込み、強く一発打ち込んだ。
足を掬おうとされたのでそのくるぶしを思い切り踏みつけ、相手が怯んだその隙に踵落としを入れる。後ろから飛びかかってくるやつはしゃがんで避け、着地にバランスを崩しているその状態の腹部を思い切り蹴り上げた。もう敵はステージにいない。
手持ち無沙汰なソウスケにちょうどよくアイが落ちてくる。上下逆さまのままソウスケはキャッチ。
「うわっ。頭から来た。」
「「うわっ」じゃないですよ!」
「…ちょっと煽るか。」
ソウスケはそう呟き、上下逆さのアイを立たせた。
そして、アイを後ろから緩く抱きしめて、アイの肩に頭を乗せて挑発的に言い放った。
「お前ら、まだこいつに指一本も触れられてねーじゃん。どうしたどうした〜そんなもんかぁ〜?」
見事なほどに煽っている。分かりやすいが、逆にその分かりやすい煽りがウザいのだ。観客は一気にアイに集中した。
「んじゃ、10秒待ってやるよ。ほら。」
ソウスケはアイをステージの前に立たせた。
そのままソウスケは後ろに下がる。アイは突然の状況に意味がわかっていないようだった。
「え?」
「ほらほら。10秒待ってやるっつってんのに。なんもしなくていいわけ〜?」
「え…!?」
客席から先ほどとは比べ物にならないほど大量の観客が傾れ込んでくる。
アイはゾッとする。箱入り王女にどうしろと…!?
「え!?ソウスケ?!ソウスケっ!!」
「ほら、逃げろ逃げろ〜。」
振り返ってソウスケに助けを求めるも、ニヤニヤとするばかりで完全に楽しんでいる。アイを助ける気などさらさらない。
「ええええええ!?」
(この人実はドSだったりします…っ!?)
アイは人の少ない方の観客席へと必死で駆け出した。
「2、3…」
後ろには観客が迫っている。全力で逃げるも、もともとあまり走り回る方ではない上、相手は日々戦い合っている成人男性達だ。すぐ追いつかれてしまうに決まってる。
「7、8、9…」
ソウスケは優雅にカウントダウンをしながらアイが必死で逃げる様と目の色を変えて押し寄せる大群達を眺めていた。
「10。」
そう言い放つと同時にソウスケは観客たちへ走り出した。
逃げるアイを追いかける大群を追いかけるソウスケ…。新手の鬼ごっこである。
アイは、人の少ない上のフロアに逃げるも、体力が限界を迎えている。息は切れるし、足は酷く重たい。だが、後ろには大勢の追手が迫っていた。
(呼吸が、苦しい。喉の奥がギュウっと閉まるような感覚がする。足はもう上がりそうにない。どうしよう、捕まる…っ!!)
その時。何か後ろで、大きい衝撃音がした。でも今振り向いたらその分の時間だけでも追っ手が来て捕まるんじゃないかと思い、アイはそのまま必死で足を動かし続けた。
「はい、捕まえた。」
…声に振り向くと、ソウスケが後ろにいた。
「え…?」
(あの人々はどこへ…?)
更にソウスケの向こう側を見ると、そこにはたくさんの敵が倒れていた。
みんな死んではないようだが明らかに戦闘不能である。流石に目が信じられない。
(え、だって、この短期間で、この人数を…!?)
「上にほとんど行っちゃったみたいだし、後は下の数人を片付けるだけかな〜。」
ソウスケは、ニコッと笑って軽やかに下のフロアへと飛び降りた。
また衝撃音がしたのち、すぐに誰の声も聞こえなくなった。
「おーい。こっち来てー。もう全員やっつけたから。キャッチするから飛び降りてー。」
あとはアイがソウスケの元へ行けば、イベント終了だ。
でも、この高さを飛び降りろというのは…
無理です、と言う意を込めてソウスケを見つめるも、腕を広げたままソウスケは動かない。
「うぅ……。…い、行きまーす!」
なけなしの勇気を振り絞り、もうどうにでもなれと無駄に元気な掛け声と共にアイは宙に身を投げる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
(やっぱり落ちるのは無謀すぎました…っ!!)
アイは恐怖で目をギュッと瞑った。
「おかえり。」
急に体が止まったので目を開けると…アイはソウスケの腕の中にいた。
これが本当の「お姫様抱っこ」である。
「…ただいまです。」
アイはなんだか恥ずかしくなり、ソウスケから目を逸らした。
ソウスケの笑みは、いつのまにか消えていた。戦闘モードとのオンオフがわかりやすいタイプらしい。
〈おめでとうございます!本日の奪い合いイベントの勝者は、ソウスケです!!〉
…こうして、アイとソウスケはこの裏の世界で正式に認められたのだった。
うおおおおおおおおお、と会場がまた違う種類の歓声に包まれる。すごい熱気だ。
「う、奪い合いイベントってなんですか!?」
「じきに説明がある。」
〈え〜月一回不定期に開催される〜奪い合いイベント!大抵は高価な宝石かペア組みたい強い人ー!などですが、今回はソウスケが攫ってきたと噂の王女、アイ!!あ、VIPは参加不可ですのでご了承くださーい!えーそれではー、よーい、スタート〜!!〉
アナウンスと共に客席から大量の人が傾れ込んできた。
「えっ、えっ、どうしましょう!ってかなんでこんなに人来るんですか!?」
「んー知らんけど王女持ってる〜って自慢できると思ってるか売りたいだけじゃね?」
「えぇ…っ!?」
「落ち着けって。…俺が奪えばいいだけだろ。」
そう言うと、ソウスケはアイを急に持ち上げ、力一杯上に放り投げた。
「ん?え、へ……っ!?……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
空中に放り出されたアイは混乱と驚きと恐怖で悲鳴をあげる。
ソウスケはそんなアイを放置して押し寄せて来る観客を見渡した。
観客は迷わずソウスケを倒そうとする。いくらソウスケだとしても、これだけの人数で押せば倒せるだろうと思っているのだ。
実際、いくらソウスケでもアイを抱えては太刀打ちできない。
…そう、アイを抱えていれば。
「…来いよ。バカども。」
ソウスケはとびきりの笑顔で観客を煽った。ステージにはすでに前列の方に座っていた観客が15人ほど入ってきていた。
殴りかかって来る男にそのスマイルのまま駆け出していき、両足で軽やかにジャンプ。そのまま顔面を蹴り飛ばし、その男を足場しにて後ろにバク宙。その振り下ろした足で後ろにいた男を蹴り、そのまま片足で着地して浮いてる足を回し蹴り。2人分の首に命中させた。
掴みかかってきたやつの腹に一発入れ、そいつの持っているバールを奪い取る。それを振り回して3人を一掃。そしてついでのように近くにいた相手をローキックで体勢を崩し、バールをぶつける。
(んー、これ、なんか飽きたしいっか。)
ソウスケはバールを投げ捨てると迫り来る観客にどんどん打ち込んでいく。ソウスケは基本肉弾戦派なのだ。
一方その頃アイは、闘技場の天井近くまで飛ばされていた。
(…あっ、ぶつかる…っ!)
そう危惧してぎゅっと目を瞑り、手のひらを天井に向けた。
しかしぶつかるスレスレでアイの体にふわりと浮く感覚。あ、落ちる、と思ったその時。やっぱり体が落下していく。内臓が浮いているような感覚と、頭から真っ逆さまに落ちているその状況にまたアイは悲鳴を上げた。
ソウスケは基本無心で戦う派なので余裕の様子。秒数的にそろそろ落ちて来る頃だ。相手を殴り倒しながらそんなことを考えるくらいには。
横から横蹴りをしてきた男の足を掴み、そのままを振り回す。これで5人ほどを一掃。
…相手の武器だろうが、相手本人だろうが武器にする。これがソウスケのやり方なのである。
ちょうどいいところでパッと手を離す。男は遠心力のまま吹っ飛ばされた。別のやつに真正面から殴りかかられるも避けて腹部に潜り込み、強く一発打ち込んだ。
足を掬おうとされたのでそのくるぶしを思い切り踏みつけ、相手が怯んだその隙に踵落としを入れる。後ろから飛びかかってくるやつはしゃがんで避け、着地にバランスを崩しているその状態の腹部を思い切り蹴り上げた。もう敵はステージにいない。
手持ち無沙汰なソウスケにちょうどよくアイが落ちてくる。上下逆さまのままソウスケはキャッチ。
「うわっ。頭から来た。」
「「うわっ」じゃないですよ!」
「…ちょっと煽るか。」
ソウスケはそう呟き、上下逆さのアイを立たせた。
そして、アイを後ろから緩く抱きしめて、アイの肩に頭を乗せて挑発的に言い放った。
「お前ら、まだこいつに指一本も触れられてねーじゃん。どうしたどうした〜そんなもんかぁ〜?」
見事なほどに煽っている。分かりやすいが、逆にその分かりやすい煽りがウザいのだ。観客は一気にアイに集中した。
「んじゃ、10秒待ってやるよ。ほら。」
ソウスケはアイをステージの前に立たせた。
そのままソウスケは後ろに下がる。アイは突然の状況に意味がわかっていないようだった。
「え?」
「ほらほら。10秒待ってやるっつってんのに。なんもしなくていいわけ〜?」
「え…!?」
客席から先ほどとは比べ物にならないほど大量の観客が傾れ込んでくる。
アイはゾッとする。箱入り王女にどうしろと…!?
「え!?ソウスケ?!ソウスケっ!!」
「ほら、逃げろ逃げろ〜。」
振り返ってソウスケに助けを求めるも、ニヤニヤとするばかりで完全に楽しんでいる。アイを助ける気などさらさらない。
「ええええええ!?」
(この人実はドSだったりします…っ!?)
アイは人の少ない方の観客席へと必死で駆け出した。
「2、3…」
後ろには観客が迫っている。全力で逃げるも、もともとあまり走り回る方ではない上、相手は日々戦い合っている成人男性達だ。すぐ追いつかれてしまうに決まってる。
「7、8、9…」
ソウスケは優雅にカウントダウンをしながらアイが必死で逃げる様と目の色を変えて押し寄せる大群達を眺めていた。
「10。」
そう言い放つと同時にソウスケは観客たちへ走り出した。
逃げるアイを追いかける大群を追いかけるソウスケ…。新手の鬼ごっこである。
アイは、人の少ない上のフロアに逃げるも、体力が限界を迎えている。息は切れるし、足は酷く重たい。だが、後ろには大勢の追手が迫っていた。
(呼吸が、苦しい。喉の奥がギュウっと閉まるような感覚がする。足はもう上がりそうにない。どうしよう、捕まる…っ!!)
その時。何か後ろで、大きい衝撃音がした。でも今振り向いたらその分の時間だけでも追っ手が来て捕まるんじゃないかと思い、アイはそのまま必死で足を動かし続けた。
「はい、捕まえた。」
…声に振り向くと、ソウスケが後ろにいた。
「え…?」
(あの人々はどこへ…?)
更にソウスケの向こう側を見ると、そこにはたくさんの敵が倒れていた。
みんな死んではないようだが明らかに戦闘不能である。流石に目が信じられない。
(え、だって、この短期間で、この人数を…!?)
「上にほとんど行っちゃったみたいだし、後は下の数人を片付けるだけかな〜。」
ソウスケは、ニコッと笑って軽やかに下のフロアへと飛び降りた。
また衝撃音がしたのち、すぐに誰の声も聞こえなくなった。
「おーい。こっち来てー。もう全員やっつけたから。キャッチするから飛び降りてー。」
あとはアイがソウスケの元へ行けば、イベント終了だ。
でも、この高さを飛び降りろというのは…
無理です、と言う意を込めてソウスケを見つめるも、腕を広げたままソウスケは動かない。
「うぅ……。…い、行きまーす!」
なけなしの勇気を振り絞り、もうどうにでもなれと無駄に元気な掛け声と共にアイは宙に身を投げる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
(やっぱり落ちるのは無謀すぎました…っ!!)
アイは恐怖で目をギュッと瞑った。
「おかえり。」
急に体が止まったので目を開けると…アイはソウスケの腕の中にいた。
これが本当の「お姫様抱っこ」である。
「…ただいまです。」
アイはなんだか恥ずかしくなり、ソウスケから目を逸らした。
ソウスケの笑みは、いつのまにか消えていた。戦闘モードとのオンオフがわかりやすいタイプらしい。
〈おめでとうございます!本日の奪い合いイベントの勝者は、ソウスケです!!〉
…こうして、アイとソウスケはこの裏の世界で正式に認められたのだった。