それにしても、親子そっくり。この時のおじいちゃん、今のお父さんに少し似てるもん。
他には、何かの記念写真や、老人会の集まりでの写真など。
家族仲が良好なのがうかがえるけれど……。
「なんか犬が多いなぁ……」
「はははっ。家族全員動物大好きだったからねぇ。ここに写ってるのはみんな男の子だよ」
家族写真の中の犬をまじまじと眺めていたら、祖父が笑いながら隣に腰を下ろした。
お行儀よく座っているのがポチ、お腹を見せて寝ているのがタロウ、全身ふさふさしているのがシズユキなのだそう。
「ポチは頑固な分、2人きりの時は甘えん坊だった。タロウはのんびり屋さんで、シズユキは元気いっぱいだったなぁ」
「へぇ、そうなんだ」
熱く語る祖父の瞳が輝いている。
こんなに好きなら、新しい家族を迎えるのも納得だ。後で犬と仲良くなる方法を教えてもらおう。
「智、一花ちゃん、ひいおばあちゃん起きたって」
半分聞き流しながら頷いていると、部屋の外から伯母に呼ばれた。居間を後にし、奥の部屋へ向かう。
「おばあちゃん、連れてきたよ」
伯母の後ろからそっと顔を出した。
パイプベッドに座る、花柄のブラウスを身にまとったおばあさん。隣にいる祖母に背中を擦られながら穏やかな笑顔を浮かべている。
「お義母さん、覚えてる? 智くんと一花ちゃん」
「こんにちはー。ひ孫の智でーす。DK1年生だよ!」
部屋に入るやいなや、智が先陣を切って挨拶をした。祖父母の時と変わらないテンションで近づき、そのまま手を取って握手。
あっちからしたら、DKって何だよって感じだけど、「よく来たねぇ」と笑っている。智は大丈夫だったようだ。
「さ、一花ちゃんも」
伯母に背中を押されて、自分も彼女の元へ。
私のこと、覚えてるかな。
お父さんが言うには、話はできる反面、老眼が進んであまり目は見えていないんだとか。
私が来ることも一応伝えてはいるみたいだけど……どうだろう。
「こんにちは……智と同じく、ひ孫の一花です」
智の陰から顔を出して恐る恐る自己紹介をした。彼に向いていた視線がゆっくりと自分に向く。
うわぁ、めちゃめちゃ見られてる。眼差しは全然怖くないのに、緊張で心臓がバクバク鳴っててうるさい。
「あ、あの……」
聞こえなかったのかなと思い、再度名乗ろうとしたその時。
「……タダシさん?」
え? タダシ? 誰?
「お義母さんっ、違うよ! 一花ちゃん! ひ孫だよ!」
「あぁ、そうかい? それは失礼しました」
深々と頭を下げて謝罪した曾祖母。
どちら様ですかとは言われなかったから良かったものの……知らない人に間違えられるのも、なんか複雑だな。ましてや女の人じゃなくて男の人に。老眼で見えにくいのなら仕方ないんだけどね。
その後、曾祖母と一緒に居間に戻った。
少し談笑し、時計の針が正午を指したところで、昼食の準備に取りかかることに。
祖父と智には、テーブルと席の設置と、曾祖母とジョニーのお世話を。祖母と伯母と私は、車に乗って近所のスーパーへ向かった。
お惣菜とオードブルを購入して帰宅し、台所でお皿に盛りつける。
台所は居間とは別室。冷房はなく、数分動けばすぐ汗だくになる。
多くの人なら、ベタベタして気持ち悪いとか、早く着替えたいと愚痴を漏らすだろうけど……。
「わぁ! 一花ちゃん、切るの上手ね!」
「あら本当! これは百人力だわ〜」
「えへへ。ありがとうございます」
得意の包丁さばきを褒められて、気分は最高潮。だって私、料理するの大好きだから!
しかも今日は、お刺身やお肉など、大好物だらけ。着替えは持ってきたので、多少汗をかいても気にしない。
設置を終えた2人に配膳を手伝ってもらい、最後に、伯母が買ってくれたメロンを切り分ける。
甘い部分が均等になるよう、慎重に包丁を入れて8等分。
1つは、お金を出してくれた香織おばさんに。
もう1つは、仏壇のひいおじいちゃんに。せっかくならみんなで味わいたいからね。
全員に配り終え、ふかふかの座布団の上に腰を下ろした。
「えー、今日は集まってくれてありがとうございます。まだ全員揃ってはいませんが、ひとまず乾杯しましょう!」
祖父の掛け声に合わせて、「乾杯!」とガラスのコップをぶつけ合った。
ぷはーっ、ひと仕事終えてのジュースは最高だ!
「おっ、唐揚げ発見。いただきまーす」
「あー! それ私が狙ってたやつ!」
「いいだろ。まだあるんだし」
「それが一番大きかったの!」
リスのように頬を膨らませてモグモグする智。
くそぉ、お店で見た時から狙ってたのに。しかも焼き鳥まで取っちゃってる。早い者勝ちとはいえ、大好物を先に取られたのは悔しい。
「一花ちゃん、唐揚げなら、こっちに大きいのあるよ。あげようか」
「えっ、いいの?」
口をへの字にしていたら、奥に座っている祖父から嬉しい情報が。
いくら孫でも、顔を合わせたのは数年ぶり。にも関わらず、こんなにも温かく接してくれるなんて……。
「ありがとう! おじいちゃんもおばあちゃんも、みんな大好き!」
「はははっ、ありがとう」
「うふふ、おばあちゃんも大好きよ」
「……チョロっ」
嬉しさのあまり、湧き上がってきた思いが溢れて自然と口が動いた。
まだ来て数時間しか経ってないけど、帰省して良かった。充分気分転換できそうだし、勉強もはかどりそうだ。
ボソッと呟いた智を無視して、もらった唐揚げをじっくり味わった。
他には、何かの記念写真や、老人会の集まりでの写真など。
家族仲が良好なのがうかがえるけれど……。
「なんか犬が多いなぁ……」
「はははっ。家族全員動物大好きだったからねぇ。ここに写ってるのはみんな男の子だよ」
家族写真の中の犬をまじまじと眺めていたら、祖父が笑いながら隣に腰を下ろした。
お行儀よく座っているのがポチ、お腹を見せて寝ているのがタロウ、全身ふさふさしているのがシズユキなのだそう。
「ポチは頑固な分、2人きりの時は甘えん坊だった。タロウはのんびり屋さんで、シズユキは元気いっぱいだったなぁ」
「へぇ、そうなんだ」
熱く語る祖父の瞳が輝いている。
こんなに好きなら、新しい家族を迎えるのも納得だ。後で犬と仲良くなる方法を教えてもらおう。
「智、一花ちゃん、ひいおばあちゃん起きたって」
半分聞き流しながら頷いていると、部屋の外から伯母に呼ばれた。居間を後にし、奥の部屋へ向かう。
「おばあちゃん、連れてきたよ」
伯母の後ろからそっと顔を出した。
パイプベッドに座る、花柄のブラウスを身にまとったおばあさん。隣にいる祖母に背中を擦られながら穏やかな笑顔を浮かべている。
「お義母さん、覚えてる? 智くんと一花ちゃん」
「こんにちはー。ひ孫の智でーす。DK1年生だよ!」
部屋に入るやいなや、智が先陣を切って挨拶をした。祖父母の時と変わらないテンションで近づき、そのまま手を取って握手。
あっちからしたら、DKって何だよって感じだけど、「よく来たねぇ」と笑っている。智は大丈夫だったようだ。
「さ、一花ちゃんも」
伯母に背中を押されて、自分も彼女の元へ。
私のこと、覚えてるかな。
お父さんが言うには、話はできる反面、老眼が進んであまり目は見えていないんだとか。
私が来ることも一応伝えてはいるみたいだけど……どうだろう。
「こんにちは……智と同じく、ひ孫の一花です」
智の陰から顔を出して恐る恐る自己紹介をした。彼に向いていた視線がゆっくりと自分に向く。
うわぁ、めちゃめちゃ見られてる。眼差しは全然怖くないのに、緊張で心臓がバクバク鳴っててうるさい。
「あ、あの……」
聞こえなかったのかなと思い、再度名乗ろうとしたその時。
「……タダシさん?」
え? タダシ? 誰?
「お義母さんっ、違うよ! 一花ちゃん! ひ孫だよ!」
「あぁ、そうかい? それは失礼しました」
深々と頭を下げて謝罪した曾祖母。
どちら様ですかとは言われなかったから良かったものの……知らない人に間違えられるのも、なんか複雑だな。ましてや女の人じゃなくて男の人に。老眼で見えにくいのなら仕方ないんだけどね。
その後、曾祖母と一緒に居間に戻った。
少し談笑し、時計の針が正午を指したところで、昼食の準備に取りかかることに。
祖父と智には、テーブルと席の設置と、曾祖母とジョニーのお世話を。祖母と伯母と私は、車に乗って近所のスーパーへ向かった。
お惣菜とオードブルを購入して帰宅し、台所でお皿に盛りつける。
台所は居間とは別室。冷房はなく、数分動けばすぐ汗だくになる。
多くの人なら、ベタベタして気持ち悪いとか、早く着替えたいと愚痴を漏らすだろうけど……。
「わぁ! 一花ちゃん、切るの上手ね!」
「あら本当! これは百人力だわ〜」
「えへへ。ありがとうございます」
得意の包丁さばきを褒められて、気分は最高潮。だって私、料理するの大好きだから!
しかも今日は、お刺身やお肉など、大好物だらけ。着替えは持ってきたので、多少汗をかいても気にしない。
設置を終えた2人に配膳を手伝ってもらい、最後に、伯母が買ってくれたメロンを切り分ける。
甘い部分が均等になるよう、慎重に包丁を入れて8等分。
1つは、お金を出してくれた香織おばさんに。
もう1つは、仏壇のひいおじいちゃんに。せっかくならみんなで味わいたいからね。
全員に配り終え、ふかふかの座布団の上に腰を下ろした。
「えー、今日は集まってくれてありがとうございます。まだ全員揃ってはいませんが、ひとまず乾杯しましょう!」
祖父の掛け声に合わせて、「乾杯!」とガラスのコップをぶつけ合った。
ぷはーっ、ひと仕事終えてのジュースは最高だ!
「おっ、唐揚げ発見。いただきまーす」
「あー! それ私が狙ってたやつ!」
「いいだろ。まだあるんだし」
「それが一番大きかったの!」
リスのように頬を膨らませてモグモグする智。
くそぉ、お店で見た時から狙ってたのに。しかも焼き鳥まで取っちゃってる。早い者勝ちとはいえ、大好物を先に取られたのは悔しい。
「一花ちゃん、唐揚げなら、こっちに大きいのあるよ。あげようか」
「えっ、いいの?」
口をへの字にしていたら、奥に座っている祖父から嬉しい情報が。
いくら孫でも、顔を合わせたのは数年ぶり。にも関わらず、こんなにも温かく接してくれるなんて……。
「ありがとう! おじいちゃんもおばあちゃんも、みんな大好き!」
「はははっ、ありがとう」
「うふふ、おばあちゃんも大好きよ」
「……チョロっ」
嬉しさのあまり、湧き上がってきた思いが溢れて自然と口が動いた。
まだ来て数時間しか経ってないけど、帰省して良かった。充分気分転換できそうだし、勉強もはかどりそうだ。
ボソッと呟いた智を無視して、もらった唐揚げをじっくり味わった。