後日、アカウントを覗いてみたら、なんと2つ上の高校生ということが判明。私が好きな自然を基調とした絵を描いており、さらに、自分が描く絵と雰囲気が似ていた。
当時中学2年生。ロマンティックな事柄に憧れるお年頃。
勝手に運命を感じ、それからは彼の投稿をチェックするようになった。
いいねボタンを押すのはもちろん、コメントも時々書き込んだ。毎回じゃないのは、警戒されないため。たった1回コメントしただけなのに絡まれちゃった、なんて怖がられたくなかったから。
2週間に1回、週に1回と、徐々に交流を図った結果、2ヶ月で認知され、3ヶ月目で相互フォロー。知り合って半年が経つ頃には、DMでやり取りする関係にまで発展した。
美しい色合いの写真をひとしきり堪能した後、場違い感が漂う食べ物の写真をタップする。
醤油漬けした鶏もも肉を使った親子丼。これは私がDMで送ったレシピを元に作られた物。
実は私、絵や景色の写真の他にも、手料理の写真もあげていて。興味を持った彼に、オススメ料理を教えてほしいと頼まれたんだ。
この写真が投稿された時、嬉しすぎて叫んだなぁ。なんならスクショしてバックアップまで取ってる。芸能人で例えると、「自分がプレゼントした服を着てくれてる!」みたいな感覚かな。
画面を戻し、最新の投稿をタップした。
【今日は七夕ですね。僕の願い事は英語のテストで平均点以上を取ることです。皆さんの願い事は何ですか?】
半月の写真と学生らしい内容の文章。
テスト勉強の合間に撮ったらしく、私もこの時ちょうど勉強してて、また運命を感じたなぁ。
もちろんコメントを、というより願い事を書き込んだんだけど……。
「結局叶わなかったなぁ……」
何を隠そう、書いたのは『小テストがなくなりますように』。ちなみにこの次の週、予告なしでテストが行われた。
今振り返ると、ちょっと酷かったなと反省している。
確かあの2人って、恋愛に溺れて仕事をサボり始めたから離れ離れにされたんだっけ。もしかしたら、『真面目に勉強しなさい』という織姫と彦星による罰ゲームだったのかも、なんてね。
苦い笑みを浮かべながらアプリを閉じた。
あれから3週間。今どうしてるだろう。願い事は叶ったのかな。
連絡したいけど、今年の春から投稿頻度が下がってるんだよね。受験生だから勉強で忙しいのかな。
電源ボタンを押して机の上に置いた瞬間、スマホが振動し始めた。画面をスワイプして母からの電話に出る。
「もしもし? 何?」
「お風呂、もうすぐお父さん上がるから入って」
「はーい」
電話を切ると、ふと画面上部の時計が目に飛び込んできた。
えっ、もう10時過ぎ⁉ 10分だけ休憩するつもりが30分以上経ってたの⁉
引き出しを開けて日記帳を出し、急いで絵を描いていく。
今日は11時に寝ようと思ってたのに、これじゃ間に合わないよぉぉ。
その後、急いでお風呂を済ませ、時間内に終わらせようと頑張ったものの、結局間に合わず。ベッドに入ったのは日付が変わる5分前だった。
翌日の朝9時。リビングにて。
「いただきまーす」
エアコンの前に立ち、桃味の棒アイスにかぶりつく。
ん〜! 外から帰った後のアイスは格別だ!
「なんだ、また食ってるのか。宿題はしたのか?」
最後の一口を味わっている最中、幸せな気分をぶち壊す声が聞こえた。髪の毛がはねていて、いかにも寝起き状態。
「うるさいなぁ! 毎日暑い中勉強してるこっちの身にもなってよ!」
部屋が閉め切られているのをいいことに、バンと机を叩いて言い返した。
「暑い中? 涼しい部屋にずっといるじゃないか」
「なわけないでしょ! ほら!」
目を丸くしている父に書きたてほやほやのメモ帳を見せつける。
生物の先生からの宿題、自由研究。テーマは、夏の草花と空。
他教科の宿題の合間を縫って、庭で雲や月を観察したり、花に関しては、近所の公園に足を運ぶこともある。
「そっちがぐーぐー寝てる間、こっちは毎朝外に出て観察してるの!」
しかし、今は夏真っ盛りの時期。うだるような暑さの中、長時間外にいるのは非常に危険。
なのでこの宿題は、気温が上がる前の比較的涼しい朝の時間にやっている。
その日の天気によっては、まだみんなが寝てる時に家を出ることもあるから、知らないのは当然なのだけど……。
「お父さんだって、仕事終わりにビール飲んでるんだから、私も好きな物くらい食べたっていいでしょ⁉ それがダメなら気分転換にどこか連れて行ってよ!」
もう既に、身も心も疲れ果てていて、限界寸前だった。
残った体力で叫ぶように言い放ち、アイスの棒をゴミ箱に投げ捨てる。
「……そうか。それなら、旅行に行くか?」
「…………え」
頭に血が上っていたせいか、反応したのは3秒後。
「どこに?」
「ひいおばあちゃんち」
いや……それ、旅行じゃなくて帰省じゃない?
ツッコミを入れる気力もなく、ジト目で父の顔を見つめる。
「おじいちゃんとおばあちゃんもいるし、1週間もいれば、充分気分転換できるだろう」
「まぁ……」
遠い過去の記憶を呼び起こす。
最後に遊びに行ったの……小学校低学年の頃だっけ。従兄弟達とテーブルを囲んで宿題をした記憶がある。人数が多かったから誰が誰かは全然覚えてないけど。
「ただ、平日は仕事があるんでな」
「えっ」
「有給は取るつもりだが、お盆休みに入るまでは先に行っててくれ」
「えええっ⁉」
10年近く行ってない曾祖母の家に、私1人で行けだって⁉ スマホで色々調べられる便利な時代とはいえ、難度高すぎない⁉
「もしもし? 姉ちゃん? 今年のお盆だけど……」
ちょっと待って、考え直して。
そう言おうとしたけれど、即行で伯母に電話をかけ始めた。
人の意見も聞かず、勝手に話を進めやがって……。
その姿に腹を立て、怒りに任せてもう1本アイスを食べた。
当時中学2年生。ロマンティックな事柄に憧れるお年頃。
勝手に運命を感じ、それからは彼の投稿をチェックするようになった。
いいねボタンを押すのはもちろん、コメントも時々書き込んだ。毎回じゃないのは、警戒されないため。たった1回コメントしただけなのに絡まれちゃった、なんて怖がられたくなかったから。
2週間に1回、週に1回と、徐々に交流を図った結果、2ヶ月で認知され、3ヶ月目で相互フォロー。知り合って半年が経つ頃には、DMでやり取りする関係にまで発展した。
美しい色合いの写真をひとしきり堪能した後、場違い感が漂う食べ物の写真をタップする。
醤油漬けした鶏もも肉を使った親子丼。これは私がDMで送ったレシピを元に作られた物。
実は私、絵や景色の写真の他にも、手料理の写真もあげていて。興味を持った彼に、オススメ料理を教えてほしいと頼まれたんだ。
この写真が投稿された時、嬉しすぎて叫んだなぁ。なんならスクショしてバックアップまで取ってる。芸能人で例えると、「自分がプレゼントした服を着てくれてる!」みたいな感覚かな。
画面を戻し、最新の投稿をタップした。
【今日は七夕ですね。僕の願い事は英語のテストで平均点以上を取ることです。皆さんの願い事は何ですか?】
半月の写真と学生らしい内容の文章。
テスト勉強の合間に撮ったらしく、私もこの時ちょうど勉強してて、また運命を感じたなぁ。
もちろんコメントを、というより願い事を書き込んだんだけど……。
「結局叶わなかったなぁ……」
何を隠そう、書いたのは『小テストがなくなりますように』。ちなみにこの次の週、予告なしでテストが行われた。
今振り返ると、ちょっと酷かったなと反省している。
確かあの2人って、恋愛に溺れて仕事をサボり始めたから離れ離れにされたんだっけ。もしかしたら、『真面目に勉強しなさい』という織姫と彦星による罰ゲームだったのかも、なんてね。
苦い笑みを浮かべながらアプリを閉じた。
あれから3週間。今どうしてるだろう。願い事は叶ったのかな。
連絡したいけど、今年の春から投稿頻度が下がってるんだよね。受験生だから勉強で忙しいのかな。
電源ボタンを押して机の上に置いた瞬間、スマホが振動し始めた。画面をスワイプして母からの電話に出る。
「もしもし? 何?」
「お風呂、もうすぐお父さん上がるから入って」
「はーい」
電話を切ると、ふと画面上部の時計が目に飛び込んできた。
えっ、もう10時過ぎ⁉ 10分だけ休憩するつもりが30分以上経ってたの⁉
引き出しを開けて日記帳を出し、急いで絵を描いていく。
今日は11時に寝ようと思ってたのに、これじゃ間に合わないよぉぉ。
その後、急いでお風呂を済ませ、時間内に終わらせようと頑張ったものの、結局間に合わず。ベッドに入ったのは日付が変わる5分前だった。
翌日の朝9時。リビングにて。
「いただきまーす」
エアコンの前に立ち、桃味の棒アイスにかぶりつく。
ん〜! 外から帰った後のアイスは格別だ!
「なんだ、また食ってるのか。宿題はしたのか?」
最後の一口を味わっている最中、幸せな気分をぶち壊す声が聞こえた。髪の毛がはねていて、いかにも寝起き状態。
「うるさいなぁ! 毎日暑い中勉強してるこっちの身にもなってよ!」
部屋が閉め切られているのをいいことに、バンと机を叩いて言い返した。
「暑い中? 涼しい部屋にずっといるじゃないか」
「なわけないでしょ! ほら!」
目を丸くしている父に書きたてほやほやのメモ帳を見せつける。
生物の先生からの宿題、自由研究。テーマは、夏の草花と空。
他教科の宿題の合間を縫って、庭で雲や月を観察したり、花に関しては、近所の公園に足を運ぶこともある。
「そっちがぐーぐー寝てる間、こっちは毎朝外に出て観察してるの!」
しかし、今は夏真っ盛りの時期。うだるような暑さの中、長時間外にいるのは非常に危険。
なのでこの宿題は、気温が上がる前の比較的涼しい朝の時間にやっている。
その日の天気によっては、まだみんなが寝てる時に家を出ることもあるから、知らないのは当然なのだけど……。
「お父さんだって、仕事終わりにビール飲んでるんだから、私も好きな物くらい食べたっていいでしょ⁉ それがダメなら気分転換にどこか連れて行ってよ!」
もう既に、身も心も疲れ果てていて、限界寸前だった。
残った体力で叫ぶように言い放ち、アイスの棒をゴミ箱に投げ捨てる。
「……そうか。それなら、旅行に行くか?」
「…………え」
頭に血が上っていたせいか、反応したのは3秒後。
「どこに?」
「ひいおばあちゃんち」
いや……それ、旅行じゃなくて帰省じゃない?
ツッコミを入れる気力もなく、ジト目で父の顔を見つめる。
「おじいちゃんとおばあちゃんもいるし、1週間もいれば、充分気分転換できるだろう」
「まぁ……」
遠い過去の記憶を呼び起こす。
最後に遊びに行ったの……小学校低学年の頃だっけ。従兄弟達とテーブルを囲んで宿題をした記憶がある。人数が多かったから誰が誰かは全然覚えてないけど。
「ただ、平日は仕事があるんでな」
「えっ」
「有給は取るつもりだが、お盆休みに入るまでは先に行っててくれ」
「えええっ⁉」
10年近く行ってない曾祖母の家に、私1人で行けだって⁉ スマホで色々調べられる便利な時代とはいえ、難度高すぎない⁉
「もしもし? 姉ちゃん? 今年のお盆だけど……」
ちょっと待って、考え直して。
そう言おうとしたけれど、即行で伯母に電話をかけ始めた。
人の意見も聞かず、勝手に話を進めやがって……。
その姿に腹を立て、怒りに任せてもう1本アイスを食べた。