白鬼の封印師 二

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場所は変わってここは鬼頭家の中。
黒雲(くらくも)』と書かれた札が下がる、ある部屋の中では死んだような顔の男が一人。机上に置かれた大量の書物には目も暮れず、頻りに机へ頭を打ち付けては何かをブツブツと呟いていた。

「いつまでそうしてるおつもりで?」

鬼頭家での仕事は山積み。
三大妖家として。
王家の側近として司令塔のような役目を果たす鬼頭家には暇というものが存在しない。最近では厄介な術家との騒ぎも相まってか、仕事量は格段に増えた。満足に寝る暇さえ与えられないこの状況に、男は疲れた顔でかけていた眼鏡を正すと自身の主へと声をかけた。

「嫌われた…確実に嫌われた…」

答えのなっていないその返答に呆れる。
今日は朝からずっとこんな調子だ。
ただでさえ白い顔を更に蒼白へと変化させた主は片頬に小さな赤いもみじ型の手形をつけて部屋へと入室してくるなり、机へと伏せそこから微動だにしない。
ようやく声を出したかと思えばこの始末。

「またですか。一体いつになったら貴方はそのイヤイヤ気を起こさなくても済むようになるのですか。上からの指示も貯まる一方で、誰かさんの放棄したその後処理は誰がするとでも?」
「は、無理難題ばっか押し付けやがる雑魚どもが。そんな野郎に時間ロスをくらうぐれぇなら、時雨との時間を優先する方が賢明な判断だろ。誰が良い子ちゃんに従うかよ」

顔を上げた白夜は数ある書類を前におえ~っと表情を向けた。

「そんな大嫌いな貴方の時間ロスも、五割がた貴方ご自身がお作りになられているということ。どうぞお忘れなく」
「なんだかね~なあ撤夜。お前どう思う?」
「どう思うとは?」
「良いムードを平手打ちで拒否った時雨と。胸を触りたかったが故に甘んじてそれを受け入れた俺。どっちが悪い?」
「貴方です」

書類からは目を離すことなく答える。
何を聞いてくるのかと思いきや…そんな下らない自分勝手なことをしでかしておいて被害者ぶるとは。この唯我独尊・傍若無人の態度を隠そうともしない我が主(変態野郎)にはほとほと呆れてものも言えない。

「この俺に平手打ちする女なんざ初めてだ。いつもは顔を赤らめる奴ばっかだったから。つーかさ~こんなにも優勝しきった顔、世界中どこ探してもいないだろ!」
「そんな顔だけが取り柄の貴方が平手打ちだけで済まされたんです。彼女も婚約者とはいえ、貴方にとっては今後、それが毛嫌いへの意思表明でなければいいのですがね」
「は?嫌われてね~し。つーか、お前はなんでそう言う答えにそもそも至る訳?」
「貴方が言ったことをお返ししたまでですよ。確実に嫌われた、と」
「…お前ってたまにそういうとこあるよな。この俺に平然とそんな口叩きやがって」
「ならそのまま退職にして頂いても?」
「け、嫌なこった」