白鬼の封印師 二

「アッハッハ!!」

その後は予想していた通り、勉強なんてろくに頭に入らないまま午後の時間を迎えた。鳳魅の元に行き、今朝の話を聞かせれば彼は開口一番に盛大に笑って転げ回った。

「も~笑わないでよ!」

さっそくだが鳳魅は違和感に気づいたらしい。
うつむき加減の時雨にどうしたのかと問い詰めれば、やがて言いにくそうな顔でモジモジと話す内容には笑わずにはいられなかった。

「そうかいそうかい。遂にあの若が時雨ちゃんに手を出したと」
「未遂です!!」

面白がる鳳魅。
時雨は真っ赤になって拒否した。
冗談じゃない!
手を出しただなんて。
誰かに聞かれでもしたら御幣を生むかのようなもの言いだ。

「それであの綺麗なご尊顔に平手打ちを決め込み逃げ出したと」
「…い、いきなり過ぎてちょっとビックリしただけで。それで気づいたら白夜様をぶっ叩いてました」
「ぶっ、、(笑)。あの若に平手打ちとは。そんなこと出来るのは来世でも君ぐらいのもんだよ」

部屋での出来事。
迫り狂う白夜様に胸を鷲掴みにされ無事キャパオーバー。
真顔で見下ろしてくれば突然ニヤニヤしだすので何事かと思いきや、その顔に盛大な平手打ちをかまし込むと驚きよろめいた彼の隙をついて部屋から逃げ出した。
勿論、吞気に朝餉を一緒になんて摂れる状況ではない。
半ば逃げ帰るようにして自室へと転がり込んだ。
お香の驚く顔を他どころに別室で一人ご飯となったのだ。

「密室で二人きり♡最近は若の部屋で一緒に寝てるんだろう?逆に言えば若は耐え抜いたもんだよ」
「そ、それは…!神獣だけでは体が安定するのに時間がかかるから暫くは一緒の部屋で過ごした方がいいと言われただけで。白夜様が嫌だった訳では…」

八雲家での事件以来、体調を回復させるのに苦労した。
神獣の白蛇もかなり弱っていたため、今まで補えていた加護が上手く作用せず、問題のなかった邪気への耐性がここにきて体に響き始めてしまったのだ。鳳魅にも近寄れず、部屋から出れない状況が何日も続いた。白夜は神獣を最優先に回復させないことには何も解決出来ないと考え、その後は鳳魅の元へ連れて行き預けさせていたよう。
その間、時雨の安全は全面的に白夜が受け持ち、安全な妖力を注ぎ続けた。それでも万が一を視野に入れ、白夜は神獣が良くなるまでの期間を時雨に夜は一緒に過ごすよう言い渡していた。
初めこそ警戒した。
だが過保護よろしくの白夜は入念に時雨の容態を確認し、空き間時間を設けては常に寄り添っていた。
そう…完全に油断していたのだ。

「まさか白夜様にあんなことをされるとは…」
「男なんてそんなもん♡まあ今回ばかりは若も我慢できなかったようだけど」
「どうしよう…もう顔合わせらんないよ」
「まあまあ、そう思い悩むことないさ。誰もが通る道だ。慌てる必要なんてないのさ。徐々に徐々に…ね?♡」

楽しんでやがるぞ…この変態薬師。