白鬼の封印師 二

それにしてもなんて大きな図書館なんだ。
階にして三階、この階は最上階で古い本ほど上の階に収納されていくスタイルのようなので、掘り出し物が見つかるかもしれない。相変わらず各階のフロアやコーナーにはソファーが置かれていつ座っても読めるようになっている。窓側にはお洒落なカフェなんかも設置されていて妖も多い。

「あれ?ここはなんだろう」

一番端のコーナーまでくれば、脇に異様に変な雰囲気を出したドアがあった。ドアには「関係者以外、立ち入り禁止」とのテープが貼られていて一般は入ることができない。だがよく考えたらおかしい。一番端の壁側コーナーである筈のこの場所にドア。外から見たらそこだけ飛び抜けて部屋があれば特に問題はないが、ドアの向こうは普通にただの壁。
外から見たら、三階は平坦な壁しかない造り。

「変なの。わざわざ壁にドアを付けるなんて」

ドアを見つめれば、時雨のいるそのコーナーは三階でも一番奥の比較的誰も通らない場所。こころなしか照明も薄暗く、少しばかり気味が悪かった。行き止まりなら仕方ない、諦めて引き返そうとすればアズチがいない。

「あれ?アズチは??」

ーーしぐれ!入れそうだよ

「え?」

するとアヅチはドアの前にいた。
ユラユラ浮遊していたが、ためらうことなくスーッとドアの中に入り込めば姿が見えなくなってしまう。時雨は驚いてドアの目の前で佇む。よく見ればドアが歪んでいた。

「もしかして…結界??」

ーーしぐれも来なよ!

向こう側からはアズチの声が聞こえる。
ドアに触れればはスッと奥に飲み込まれる。

ーー大丈夫!この結界は妖に有効。しぐれは人間。怖くない

「でもここ立ち入り禁止区域だし…」

躊躇して進めないでいればドアの前で考え込んでしまう。

ーーしぐれ!こっちに術家の本が置いてある

「え!!ホントに⁈」

アヅチの言葉に大きく反応した。
ここを潜ればお目当ての書物が手に入る。
もう入ってしまおうか。
ついに欲に負けて中に入れば、壁しかないと思っていたドアの向こうに別の図書館が存在していた。さっきまでいた図書館よりも更に古い…そんな造りをした場所だ。

「ほ、ホントに大丈夫かな、、」

ーーおいでよ、バレなきゃ大丈夫。グプスもよく来るよ

「グプス君が⁉」

彼がここに入るってことは彼はここの関係者ってこと??
でも妖はここを通れないんじゃないの?
謎は深まるばかり。

ーー異能と術師のこと知りたいんでしょ?しぐれは異能とは違う神気を感じる

「神気?あ」

時雨が裾をまくると腕に巻き付く青龍がいた。
小さな体でとぐろを巻きスヤスヤと眠りこける彼こそが四神の青龍。昨日までは人の姿だったが、代償がデカイのか、今日は朝から一度も目を覚ましてくれない。

ーーそいつは神獣??神聖な聖地でしか生きられない彼らが。なぜここに

「私の眷属だよ。契約して加護を受けてるんだ。だから私は邪気に侵されることはない。でも彼にはその分代償が大きいのかも」

ーーそれはそうだよ!だって今の彼は凄い弱体化してる

「弱体化??」

アヅチは青龍の近くに来れば心配そうに揺れ始めた。
弱体化してるから目を覚まさないの??
時雨は一気に心配になった。

ーーふ~む…"ここは妖都で邪気も強くて大変""今は眠ることしかできない”そう言ってるよ

「アヅチ、青龍とお話できるの?」

ーー意思疎通はかれる。"暫く起きれない、しぐれ守れない!"って凄い悔しそうにしてる

「そ、そうなんだ」

なんとも青龍らしい。
やっぱり無理してたんだ。
昨日は宿に着いた途端、「少し休みます」とだけ言って青龍に戻っちゃったし。ずっと起きずに不思議だとは思っていたけど、まさか弱体化してたなんて。

ーーしぐれ、彼は何も気にするなって
ーーもう少しで回復できる。だからそんな悲しい顔しないでって

「青龍…」

うぅ…ごめんね。
回復したらたくさんお話しようね!!
だから今は気にせずいっぱい休んで。
時雨は優しく青龍の頭を撫でた。

ーーあれ?回復したら鬼神を川に流すってさ

「え」

ーー何でもさっきの女が言っていたこと相当怒ってるみたい…え、なになに?

「ん?どうしたの?」

ーー…あの鬼を八つ裂きにするって。変に張り切ってる

「えぇ、、、青龍」

あれ?
青龍ったら意外と元気だったりして??
弱体化とは言うが単に眠っているだけならそこまで心配せずとも大丈夫なのかな。青龍がなぜこうも白夜様を毛嫌いするのかは分からないが、帰ってきた白夜様に何かしないよう見張っておかないと。