「はぐれないようについてきて。誰かに見つかると厄介だから」
グプス君は受付けにて本を返却すればさっさと奥へと進んでしまうので急いで後を追いかける。
階段を上がって奥に進めば進むほど本の数は多くなっていき、やっと開けた場所までやってくるとそこは本の世界が広がっていた。
「わあ、本だらけだ!!」
四方八方どこを見ても本。
天井からは暖かい照明ランプが部屋全体を明るく照らし、コーナーには多くの妖達がいた。
「はしゃぎすぎて落ちないでね。ここ二階だから」
隣ではグプス君が可笑しそうに笑っている。
見れば目の前の手柵からは下の様子が確認でき、今いるとこからは結構な高さだ。
「落ちないよ!そこまでお転婆じゃないし」
「それはどうだか。んじゃ、僕は本を借りに別のとこ行くけど…君はどうする?」
「私も色々と探しに行ってみる。あ、でもどこかで落ち合わないとダメだよね」
こんなに広いんだもん。
もし迷子になったら、それに図書館の中ならまだいいが宿までの帰り方が分からない。
「あの…実は私、宿までの帰り方が分からなくて」
「いいよ。特別に送ってってあげる」
「え、ホントに⁉ありがとう、凄く助かるよ!」
助かった、これで帰り道も安心して帰れる。
「じゃあ、そっちの用事が済んだら僕んとこ来て。待ってるから」
「え?でもグプス君がどこにいるのか分からないよ」
「大丈夫、こいつがいるから」
そう言うとグプス君は手の平から一つの火玉を出した。
火玉はユラユラと薄い青色に光ればゆっくり私の方に近づき、肩の位置で静止する。
「それ、僕の鬼火。会いたくなった時にソイツに聞けば場所まで案内してくれるから」
「へ~凄いね。なんだか可愛い」
鬼火か~、グプス君も子供ながら術が使えるんだ。
そう言えば前にお香さんも同じようなのものを出していた。
ーーし…し…
「え?」
「…どうしたの?」
「なんか今、声が聞こえたような、、」
気のせいだろうか。
でも決して大きくはないが確かに声が聞こえたような。
「声?別に何も聞こえなかったけど」
「そう?なら気のせいかな?あ、じゃあこの子、借りてくね!」
私達はここで二手に別れるとそれぞれの見たいコーナーを回った。とりあえず片っ端からコーナーを見て回ろうと手始めに一番近くのコーナーに入る。
古代魔法学、薬の知恵袋、鳩の飛行術。
なんだかよく分からないが、ここには変わったジャンルの本が多く立ち並んでいた。
「うーん、どれも難しい本ばっかり。でもお目当ての本はなかなかないな…」
探しているのは術師と異能について。
でも暫くこうして探そうと色々と見て回ろうにもお目当てのものは一向に見つからない。やっぱり隠世の世界で現世の情報を収集するのは厳しいのだろうか。
ーーし、しぐ…しぐれ
「え?」
まただ、やっぱり気のせいなんかじゃない。
さっきと同じあの声が聞こえる。
ーーしぐれ、しぐれ
「だ、誰??どこにいるの?」
見渡しても誰もいない。
ーーここ、ここだよ。
なんだか声の主は私の直ぐ近くを浮遊している鬼火から聞こえてくる。
「も、もしかして。この声の正体って…鬼火さん??」
ーーうん、そうだよ
「え、お、鬼火が喋った!?」
私がそれに驚けば鬼火はユラユラと嬉しそうに揺らめいた。
ーー僕の声が聞こえるんだ!嬉しいな、こんな子は初めてだ。僕はアヅチ。
「私はさっきも言った通り、時雨よ。久野時雨」
ーー久野?それはこの世界の名前ではないね。
「ああ…うん。実は私、妖じゃなくて人間なの」
ーー人間?人間がどうしてここにいるの?
アヅチは不思議そうにそう聞くと揺らめいた。
「私は鬼頭家の花嫁として久野家という術家の家系から来たのよ。そして白夜様の元に嫁入りしてきたの」
ーー術家の花嫁?じゃあ君はあの鬼神の花嫁様なんだね!
「…ふふ、そうだといいな」
どうして…ここまで嬉しそうに話すアヅチからの問いに自信をもって答えられないのだろう。
それはさっきまであの女性に言われていた言葉が頭に染み付いているからだろうか。
白夜様は確かに私を花嫁として認めてはくれたけど。
ならもう何も心配することなどないというのに。
ーーしぐれ、どうしたの?
「ううん、何でもないよ」
アヅチが心配そうに私の顔元へと寄って来てくれる。
心なしかほんのりとアヅチからは温かみを感じる。
「別の場所へ移動しようか。もうここにお目当ての本は無さそうだから」
心はどこかぽっかりと空洞が空いたようにスッキリとはしないが気持ちを入れ替えれば別のコーナーを目指した。
グプス君は受付けにて本を返却すればさっさと奥へと進んでしまうので急いで後を追いかける。
階段を上がって奥に進めば進むほど本の数は多くなっていき、やっと開けた場所までやってくるとそこは本の世界が広がっていた。
「わあ、本だらけだ!!」
四方八方どこを見ても本。
天井からは暖かい照明ランプが部屋全体を明るく照らし、コーナーには多くの妖達がいた。
「はしゃぎすぎて落ちないでね。ここ二階だから」
隣ではグプス君が可笑しそうに笑っている。
見れば目の前の手柵からは下の様子が確認でき、今いるとこからは結構な高さだ。
「落ちないよ!そこまでお転婆じゃないし」
「それはどうだか。んじゃ、僕は本を借りに別のとこ行くけど…君はどうする?」
「私も色々と探しに行ってみる。あ、でもどこかで落ち合わないとダメだよね」
こんなに広いんだもん。
もし迷子になったら、それに図書館の中ならまだいいが宿までの帰り方が分からない。
「あの…実は私、宿までの帰り方が分からなくて」
「いいよ。特別に送ってってあげる」
「え、ホントに⁉ありがとう、凄く助かるよ!」
助かった、これで帰り道も安心して帰れる。
「じゃあ、そっちの用事が済んだら僕んとこ来て。待ってるから」
「え?でもグプス君がどこにいるのか分からないよ」
「大丈夫、こいつがいるから」
そう言うとグプス君は手の平から一つの火玉を出した。
火玉はユラユラと薄い青色に光ればゆっくり私の方に近づき、肩の位置で静止する。
「それ、僕の鬼火。会いたくなった時にソイツに聞けば場所まで案内してくれるから」
「へ~凄いね。なんだか可愛い」
鬼火か~、グプス君も子供ながら術が使えるんだ。
そう言えば前にお香さんも同じようなのものを出していた。
ーーし…し…
「え?」
「…どうしたの?」
「なんか今、声が聞こえたような、、」
気のせいだろうか。
でも決して大きくはないが確かに声が聞こえたような。
「声?別に何も聞こえなかったけど」
「そう?なら気のせいかな?あ、じゃあこの子、借りてくね!」
私達はここで二手に別れるとそれぞれの見たいコーナーを回った。とりあえず片っ端からコーナーを見て回ろうと手始めに一番近くのコーナーに入る。
古代魔法学、薬の知恵袋、鳩の飛行術。
なんだかよく分からないが、ここには変わったジャンルの本が多く立ち並んでいた。
「うーん、どれも難しい本ばっかり。でもお目当ての本はなかなかないな…」
探しているのは術師と異能について。
でも暫くこうして探そうと色々と見て回ろうにもお目当てのものは一向に見つからない。やっぱり隠世の世界で現世の情報を収集するのは厳しいのだろうか。
ーーし、しぐ…しぐれ
「え?」
まただ、やっぱり気のせいなんかじゃない。
さっきと同じあの声が聞こえる。
ーーしぐれ、しぐれ
「だ、誰??どこにいるの?」
見渡しても誰もいない。
ーーここ、ここだよ。
なんだか声の主は私の直ぐ近くを浮遊している鬼火から聞こえてくる。
「も、もしかして。この声の正体って…鬼火さん??」
ーーうん、そうだよ
「え、お、鬼火が喋った!?」
私がそれに驚けば鬼火はユラユラと嬉しそうに揺らめいた。
ーー僕の声が聞こえるんだ!嬉しいな、こんな子は初めてだ。僕はアヅチ。
「私はさっきも言った通り、時雨よ。久野時雨」
ーー久野?それはこの世界の名前ではないね。
「ああ…うん。実は私、妖じゃなくて人間なの」
ーー人間?人間がどうしてここにいるの?
アヅチは不思議そうにそう聞くと揺らめいた。
「私は鬼頭家の花嫁として久野家という術家の家系から来たのよ。そして白夜様の元に嫁入りしてきたの」
ーー術家の花嫁?じゃあ君はあの鬼神の花嫁様なんだね!
「…ふふ、そうだといいな」
どうして…ここまで嬉しそうに話すアヅチからの問いに自信をもって答えられないのだろう。
それはさっきまであの女性に言われていた言葉が頭に染み付いているからだろうか。
白夜様は確かに私を花嫁として認めてはくれたけど。
ならもう何も心配することなどないというのに。
ーーしぐれ、どうしたの?
「ううん、何でもないよ」
アヅチが心配そうに私の顔元へと寄って来てくれる。
心なしかほんのりとアヅチからは温かみを感じる。
「別の場所へ移動しようか。もうここにお目当ての本は無さそうだから」
心はどこかぽっかりと空洞が空いたようにスッキリとはしないが気持ちを入れ替えれば別のコーナーを目指した。