声の主はどこからともなく聞こえてくれば私達は驚いて周りを見渡した。
だが辺りには誰もいない。
「昼寝の邪魔、喧嘩ならよそでやって」
声は上から聞こえてくるようだ。
見上げてみれば、なんと直ぐ後に佇む木の上では一人の男の子が寝ころんだ姿勢でうっとうし気にこちらを見ていた。
「は?誰よ、なんなのよアンタ」
彼女はそれに気づけばイライラした様子で男の子を睨みつけた。だがこれでとりあえずは攻撃が防げたようでこちらとしては助かった。
「誰だか知らないけどアンタこそ邪魔よ。第三者は首を突っ込まないで頂戴!」
ふんと強気な態度の彼女は馬鹿にしたように口を開いた。
「あ~それ、その声。煩いしどうにかして」
男の子はキイキイ騒ぎ立てる彼女の声を聞けば嫌そうに耳をふさいだ。
「君の声がうるさい原因は元から?それともその底意地の悪い性格のせい?」
「なんですって!!」
彼女はそれを聞くと顔を真っ赤にさせて体をブルブルと怒りに震わせた。
どうやら逆鱗に触れてしまったようだ。
まさかこれ以上怒らせる羽目になるとは。
私の方は冷や汗がとまらない。
「ま、別にどっちでもいいけど。昼寝の邪魔だから、さっさとどっか行って」
男の子はこれにひるむことなく彼女を一瞥すれば、もうこちらには見向きもしなかった。
「ッ、何よ、子供のくせに生意気ね。覚えてなさいよ、この私を怒らせるとどうなるか!!」
彼女は男の子に向かって言葉を吐き捨て、去り際に私をぎろりと睨みつければ怒ったまま向こうへと行ってしまった。嵐が過ぎ去ったかのような空気の中、私はポツンと一人取り残されたが視線を彼へと戻した。
寝てしまったのだろうか、彼は何も言ってこない。
「……何?」
すると私の視線に気づいたのか、彼は気だるそうにこちらへと目を向けた。
「あ、えっと、、、助けてくれてありがとう」
慌ててお礼を言えば彼は溜息をついた。
「…別に。昼寝の邪魔だっただけ」
ぶっきらぼうにそれだけ言えば再びプイッと向こうを向いてしまう。
「それでも、貴方のお陰で助かったわ。でなければ今頃、私は串刺しにされていたかもしれないし」
「そ、なら良かったね」
するとその直後、男の子はむくりと起き上がれば軽やかに木の上から降りてくる。
「昼寝はもういいの?」
「さっきの騒ぎで目が覚めちゃったからもういい」
あくびをすれば彼はどこか疲れ切った顔をしていた。
背は私と同じかやや高いぐらいか。
袴姿でもダボッとした大きめの羽織はその体格を隠しているのか元の大きさが分からない。
内側にはシャツとネクタイを着用していてまるで書生のような格好だ。
「…ごめんなさい」
「別にいいよ。そろそろ僕も帰るとこだったし」
まあ私としても、まさかこんなことになるとは夢にも思わなかった。あんな正面きって言うだけ言って去ってしまわれたら何も言えずに終わってしまうのは明白。面倒だが、これは一回、白夜様と話し合わねば。
「あ、私は久野時雨。貴方は?」
「…」
名前を聞くも何故か彼は何も言わずにただこちらを見つめるだけ。ジトリとした目は青くひかり、肩までかかる青い髪は頭のてっぺんが黒いプリン頭が特徴的な子だった。よく見ると頭には角が生えている。
「…グプス」
「え?」
「…名前」
「グプス?それが貴方の名前?」
その問いに彼はこくりと頷くと下を向いてしまう。
グプスだなんて変わった名前だな。
妖達の暮らす隠世ではあるあるなのか?
彼を見ればパチリと視線が合うも直ぐに目を逸らされてしまう。
気まずい…こういう時どうしたら。
「えっと…グプス君はよくここに来るの?」
「まあ…たまに…」
「そっか。私は今日初めてここに来たの!妖都に来るのは二回目だけど」
「二回目?」
グプス君は少しだけ視線をこちらに向けた。
話しても問題はなさそうだったので安心した。
「うん。普段は妖都に来ることもないし、今回は旅行みたいなもんかな」
まあでも、白夜様がいない以上、勝手に出かけることができないが。会いたいのに帰ってこない。
ふいに彼女の存在が頭をよぎる。
違う、絶対にそんなはず…、、、
「それ、変わったの持ってるね」
「え?」
ふいにグプス君が指さしたのは私がつけるネックレスだ。白い石の中には生きた鬼火が灯っており紫色に輝いていた。
だが辺りには誰もいない。
「昼寝の邪魔、喧嘩ならよそでやって」
声は上から聞こえてくるようだ。
見上げてみれば、なんと直ぐ後に佇む木の上では一人の男の子が寝ころんだ姿勢でうっとうし気にこちらを見ていた。
「は?誰よ、なんなのよアンタ」
彼女はそれに気づけばイライラした様子で男の子を睨みつけた。だがこれでとりあえずは攻撃が防げたようでこちらとしては助かった。
「誰だか知らないけどアンタこそ邪魔よ。第三者は首を突っ込まないで頂戴!」
ふんと強気な態度の彼女は馬鹿にしたように口を開いた。
「あ~それ、その声。煩いしどうにかして」
男の子はキイキイ騒ぎ立てる彼女の声を聞けば嫌そうに耳をふさいだ。
「君の声がうるさい原因は元から?それともその底意地の悪い性格のせい?」
「なんですって!!」
彼女はそれを聞くと顔を真っ赤にさせて体をブルブルと怒りに震わせた。
どうやら逆鱗に触れてしまったようだ。
まさかこれ以上怒らせる羽目になるとは。
私の方は冷や汗がとまらない。
「ま、別にどっちでもいいけど。昼寝の邪魔だから、さっさとどっか行って」
男の子はこれにひるむことなく彼女を一瞥すれば、もうこちらには見向きもしなかった。
「ッ、何よ、子供のくせに生意気ね。覚えてなさいよ、この私を怒らせるとどうなるか!!」
彼女は男の子に向かって言葉を吐き捨て、去り際に私をぎろりと睨みつければ怒ったまま向こうへと行ってしまった。嵐が過ぎ去ったかのような空気の中、私はポツンと一人取り残されたが視線を彼へと戻した。
寝てしまったのだろうか、彼は何も言ってこない。
「……何?」
すると私の視線に気づいたのか、彼は気だるそうにこちらへと目を向けた。
「あ、えっと、、、助けてくれてありがとう」
慌ててお礼を言えば彼は溜息をついた。
「…別に。昼寝の邪魔だっただけ」
ぶっきらぼうにそれだけ言えば再びプイッと向こうを向いてしまう。
「それでも、貴方のお陰で助かったわ。でなければ今頃、私は串刺しにされていたかもしれないし」
「そ、なら良かったね」
するとその直後、男の子はむくりと起き上がれば軽やかに木の上から降りてくる。
「昼寝はもういいの?」
「さっきの騒ぎで目が覚めちゃったからもういい」
あくびをすれば彼はどこか疲れ切った顔をしていた。
背は私と同じかやや高いぐらいか。
袴姿でもダボッとした大きめの羽織はその体格を隠しているのか元の大きさが分からない。
内側にはシャツとネクタイを着用していてまるで書生のような格好だ。
「…ごめんなさい」
「別にいいよ。そろそろ僕も帰るとこだったし」
まあ私としても、まさかこんなことになるとは夢にも思わなかった。あんな正面きって言うだけ言って去ってしまわれたら何も言えずに終わってしまうのは明白。面倒だが、これは一回、白夜様と話し合わねば。
「あ、私は久野時雨。貴方は?」
「…」
名前を聞くも何故か彼は何も言わずにただこちらを見つめるだけ。ジトリとした目は青くひかり、肩までかかる青い髪は頭のてっぺんが黒いプリン頭が特徴的な子だった。よく見ると頭には角が生えている。
「…グプス」
「え?」
「…名前」
「グプス?それが貴方の名前?」
その問いに彼はこくりと頷くと下を向いてしまう。
グプスだなんて変わった名前だな。
妖達の暮らす隠世ではあるあるなのか?
彼を見ればパチリと視線が合うも直ぐに目を逸らされてしまう。
気まずい…こういう時どうしたら。
「えっと…グプス君はよくここに来るの?」
「まあ…たまに…」
「そっか。私は今日初めてここに来たの!妖都に来るのは二回目だけど」
「二回目?」
グプス君は少しだけ視線をこちらに向けた。
話しても問題はなさそうだったので安心した。
「うん。普段は妖都に来ることもないし、今回は旅行みたいなもんかな」
まあでも、白夜様がいない以上、勝手に出かけることができないが。会いたいのに帰ってこない。
ふいに彼女の存在が頭をよぎる。
違う、絶対にそんなはず…、、、
「それ、変わったの持ってるね」
「え?」
ふいにグプス君が指さしたのは私がつけるネックレスだ。白い石の中には生きた鬼火が灯っており紫色に輝いていた。