△▼△
ーー時雨殿~
その声は暗い森の中にこだまする。
辺りを見渡せばそこには確かにいた筈の袴男子もいなくなっていて時雨一人だけ。さっきまでの出来事が噓のような静けさだ。声がした方に目を向ければ遠くからは青い光に包まれて青龍が駆けてくるのが見える。
「時雨殿!ご無事ですか⁈今そちらに…『時雨ーー!!』」
そんな青龍の声を遮ぎれば横から突進してきた白い大きな塊。
「時雨!やっと見つけた!!」
「白夜様⁉」
白夜は寸前のところで青龍を横に押し返せば目にも止まらぬ瞬殺で時雨の元に駆け込んだ。
「大丈夫か⁈怪我してないか⁈どっか痛ぇとこは…」
「大丈夫です。どこも怪我はしていません」
顔を真っ青にさせながら安否の確認をする白夜。
そんな切羽詰まった顔の白夜を一生懸命落ち着かせようとして時雨は静かに口を開いた。だが無事であることを確認した白夜は安心したと同時に頭を下げた。
「ごめん!ホントにごめんな!!全部俺のせいなんだ。俺が変な誤解を生んだせいで。お前をここまで傷つけた」
自分がした散々な失態と誤解のせいで時雨を追い込んでしまった。
怖がらせてしまった。
泣きはらした目で自分を見つめたあの顔が今でも忘れられない。
白夜は酷く落ち込んだ顔をすれば必死に謝った。
「俺がもっとちゃんと話を聞いていれば。お前の話に耳を傾けていれば。慣れない仕事に頭が追いついていかないせいか、無償にイライラしてたこともある。ただお前に会いたい一心で頑張っていたはずなのに…神獣の正体にも気づけない始末だ。だたお前を問い詰めて。結果怖がらせた。もう自分が情けなくて仕方ねぇ」
「白夜様…」
白夜は怖くて堪らなかった。
目の前から時雨が走り去った時、心の中は絶望でいっぱいだった。
こうして無事に見つけ出せた時の安堵感。
もしも自分のせいで彼女の身に何か起こっていたら。
取り返しのつかない事態に巻き込まれていたら。
必死に探そうにも不運なことに屋敷から消えた時雨の気配。不安は重なる一方で気が狂いそうだった。
「許して欲しいとは言わない。怖がられても仕方がないことをしたんだし。二度とお前に触れられなくなっても構わない。でも俺の側から離れることだけはしないでくれ」
「!」
「愛してるんだ。だから俺から離れないでくれ」
懇願する白夜の顔には一粒の涙が伝った。
「え、白夜様⁈なんで泣いて」
「怖い」
「!」
そうこぼす顔は子供のように幼かった。
「約束や契約を取り付けたところで…いつか俺の側からいなくなる未来が来るかもしれない。俺にはお前しかいないのに。俺にはそれが堪らなく耐えられない」
体は震えていて何かに怖がっているようだ。
ああ、こんなにも私のことを心配して…
時雨は白夜に手を伸ばせばギュッとその身を強く抱きしめた。
それに白夜はびくりと反応する。
「離れません。私は白夜様の側にいますから。約束は守ります。私は貴方だけのものです。なのでそんな怖がらないで下さい」
震える頭を撫でてあげれば、自分より一回りも二回りも大きいその体からは力が抜けていく。体から漏れるオーラが消えれば威圧感溢れるいつもの様子とは一変、今の彼は何処か落ち着いている。時雨の言葉に安心したのだろう。
「時雨、…好き、好きだ」
「はい。私も好きですよ、白夜様」
その言葉でやっと白夜は嬉しそうに笑った。
時雨を見つめれば唇に優しくキスを落とす。
ああ、やっと…やっとまたお前に触れることができた。
白夜はそれが堪らなく嬉しかった。
一度は拒絶され、もう二度と彼女に触れること叶わないだろうと覚悟していたから。彼女の方から触れてくれた時、壊れかけた心には再び光が差し込んだ。気持ちは驚くほどスピーディーに平常心を取り戻していく。
ああ、愛おしい。
どうしようもなく彼女が好きで好きで。
熱に浮かされた頭からは彼女の存在が離れようとしない。
心は何処までも支配されていく。
けど不思議とその瞬間が心地よくも思えた。
妖力を放ち、時雨の体をそっと包み込めば傷ついた体は綺麗に癒えていく。
「白夜様」
「ん?」
時雨は気まずそうに白夜の胸元から顔を上げる。
「その…さっきはごめんなさい。私も大嫌いだなんて、本当は思ってもないのに」
時雨もそれをずっと後悔していたのだ。
先走ったことを言って白夜を傷つけてしまったこと。
本当はずっと会いたくて堪らなかったこと。
それが溢れ出せば涙目になる。
「白夜様が好きです。だからさっき自分が言ってしまったことが許せなくて。ずっと後悔していたんです。もしも白夜様に嫌われたらって思ったら…私、、とても悲しくて」
「時雨…」
「ですからこれで仲直りです。大好きです、白夜様」
時雨はその瞳を見れば優しく微笑んだ。
その言葉に白夜は顔をほころばせれば、静かにまた時雨にキスを落とすのだった。
ーー時雨殿~
その声は暗い森の中にこだまする。
辺りを見渡せばそこには確かにいた筈の袴男子もいなくなっていて時雨一人だけ。さっきまでの出来事が噓のような静けさだ。声がした方に目を向ければ遠くからは青い光に包まれて青龍が駆けてくるのが見える。
「時雨殿!ご無事ですか⁈今そちらに…『時雨ーー!!』」
そんな青龍の声を遮ぎれば横から突進してきた白い大きな塊。
「時雨!やっと見つけた!!」
「白夜様⁉」
白夜は寸前のところで青龍を横に押し返せば目にも止まらぬ瞬殺で時雨の元に駆け込んだ。
「大丈夫か⁈怪我してないか⁈どっか痛ぇとこは…」
「大丈夫です。どこも怪我はしていません」
顔を真っ青にさせながら安否の確認をする白夜。
そんな切羽詰まった顔の白夜を一生懸命落ち着かせようとして時雨は静かに口を開いた。だが無事であることを確認した白夜は安心したと同時に頭を下げた。
「ごめん!ホントにごめんな!!全部俺のせいなんだ。俺が変な誤解を生んだせいで。お前をここまで傷つけた」
自分がした散々な失態と誤解のせいで時雨を追い込んでしまった。
怖がらせてしまった。
泣きはらした目で自分を見つめたあの顔が今でも忘れられない。
白夜は酷く落ち込んだ顔をすれば必死に謝った。
「俺がもっとちゃんと話を聞いていれば。お前の話に耳を傾けていれば。慣れない仕事に頭が追いついていかないせいか、無償にイライラしてたこともある。ただお前に会いたい一心で頑張っていたはずなのに…神獣の正体にも気づけない始末だ。だたお前を問い詰めて。結果怖がらせた。もう自分が情けなくて仕方ねぇ」
「白夜様…」
白夜は怖くて堪らなかった。
目の前から時雨が走り去った時、心の中は絶望でいっぱいだった。
こうして無事に見つけ出せた時の安堵感。
もしも自分のせいで彼女の身に何か起こっていたら。
取り返しのつかない事態に巻き込まれていたら。
必死に探そうにも不運なことに屋敷から消えた時雨の気配。不安は重なる一方で気が狂いそうだった。
「許して欲しいとは言わない。怖がられても仕方がないことをしたんだし。二度とお前に触れられなくなっても構わない。でも俺の側から離れることだけはしないでくれ」
「!」
「愛してるんだ。だから俺から離れないでくれ」
懇願する白夜の顔には一粒の涙が伝った。
「え、白夜様⁈なんで泣いて」
「怖い」
「!」
そうこぼす顔は子供のように幼かった。
「約束や契約を取り付けたところで…いつか俺の側からいなくなる未来が来るかもしれない。俺にはお前しかいないのに。俺にはそれが堪らなく耐えられない」
体は震えていて何かに怖がっているようだ。
ああ、こんなにも私のことを心配して…
時雨は白夜に手を伸ばせばギュッとその身を強く抱きしめた。
それに白夜はびくりと反応する。
「離れません。私は白夜様の側にいますから。約束は守ります。私は貴方だけのものです。なのでそんな怖がらないで下さい」
震える頭を撫でてあげれば、自分より一回りも二回りも大きいその体からは力が抜けていく。体から漏れるオーラが消えれば威圧感溢れるいつもの様子とは一変、今の彼は何処か落ち着いている。時雨の言葉に安心したのだろう。
「時雨、…好き、好きだ」
「はい。私も好きですよ、白夜様」
その言葉でやっと白夜は嬉しそうに笑った。
時雨を見つめれば唇に優しくキスを落とす。
ああ、やっと…やっとまたお前に触れることができた。
白夜はそれが堪らなく嬉しかった。
一度は拒絶され、もう二度と彼女に触れること叶わないだろうと覚悟していたから。彼女の方から触れてくれた時、壊れかけた心には再び光が差し込んだ。気持ちは驚くほどスピーディーに平常心を取り戻していく。
ああ、愛おしい。
どうしようもなく彼女が好きで好きで。
熱に浮かされた頭からは彼女の存在が離れようとしない。
心は何処までも支配されていく。
けど不思議とその瞬間が心地よくも思えた。
妖力を放ち、時雨の体をそっと包み込めば傷ついた体は綺麗に癒えていく。
「白夜様」
「ん?」
時雨は気まずそうに白夜の胸元から顔を上げる。
「その…さっきはごめんなさい。私も大嫌いだなんて、本当は思ってもないのに」
時雨もそれをずっと後悔していたのだ。
先走ったことを言って白夜を傷つけてしまったこと。
本当はずっと会いたくて堪らなかったこと。
それが溢れ出せば涙目になる。
「白夜様が好きです。だからさっき自分が言ってしまったことが許せなくて。ずっと後悔していたんです。もしも白夜様に嫌われたらって思ったら…私、、とても悲しくて」
「時雨…」
「ですからこれで仲直りです。大好きです、白夜様」
時雨はその瞳を見れば優しく微笑んだ。
その言葉に白夜は顔をほころばせれば、静かにまた時雨にキスを落とすのだった。



