『ピキピキ…』
『ピキ…ピキピキ』
奇怪な音が聞こえると、壊されていたと思っていた式神達が怪物の放つ瘴気に混じって再びその姿を現した。
「あれ?なんだか…」
二体はお互いにくっつき合えば一つへと纏まった。
やがて一つの大きな塊になると瘴気の中へと埋もれていく。
「グェェ…ゲボッ、、。ギ、ギザマ、我に何をジタ⁈」
すると直後、怪物の体全身には紫色の謎の湿疹らしき痣が無数に浮かび上がった。
瘴気の影響も重なるのか、体内からは内臓を蝕むかの如く激しい痛みに酷く苦しそうな顔をすれば彼をキッと睨みつけた。
「蠱毒。古代中国から伝来した呪法の一つさ。百虫を封じた壺の中、共喰いによって生き残った勝者の御霊を操り、採取された毒を対象者へ与える。さっき君が喰らったのは蟲蝶の毒だ」
彼は懐をあされば形代を取り出して見せた。
「お前と僕が見ていた世界は最初から違ったのさ。一回目に式神が破壊された時、僕は直ちに彼らの御霊を呪符へと封じた。つまり二回目以降に見た彼らは彼らであって彼らではない。本来は全くの別の代物さ」
「!!」
「そいつは壺の中でも唯一長年の間、喰われる事なく生き永らえた二つの神霊。一つは蝶、一つは蛇。二回目でお前に攻撃したあの時、彼らはその体へ大量の毒を打ち込んだ。そして今、全てが完了した」
彼はひらひらと楽しそうな様子で形代を怪物へと見せつければ、複数枚あるうちの中から一枚を取り出すとそこにフッと息を吹きかけた。
——ピキピキ…パキッ!!
形代は宙に浮かび音を立てて壊れれば、その役目を果たしたかのように地面へと落ちてしまった。
「先程、重複によって両者は混じり一つになった。だがお前の体を支配できるのはどちらか一方。そうして殺し殺された中で勝者を勝ち取った一方は、より一層強く洗練された御霊となり今ここに誕生する」
「ガアァァ!!」
見れば瘴気を纏う怪物の体からは一匹の美しい蝶が現れた。
羽をはためかせ舞い上がれば、体からは紫色の鱗粉を散布していく。
「グゥゥ…ありえぬ!!我は確ガに式神共をゴの手で殺ジダ!!こんな虫ゴトきものに、我の目が騙されていたとでもいうのガ!!」
怪物は苦しそうに呼吸を乱すと声を荒げた。
「ああ、そのこと。簡単さ、僕はこれとは別に君にはもう一つの術をかけた。それはね…」
幻惑の術。
「!!」
「はは、驚いたかい?前鬼達の姿を維持させ、実際はこの子達を使役していた事実さえ君は気が付かなかっただろう。だがそれ故の術だ。僕の目には最初から妖魔が虫と戯れているようにしか見えなかったけどね」
彼は驚いた顔のまま動けない怪物にクスリと笑うと人差し指を立てた。
「さて、そろそろ幕切れといこうか。君がさっきまで言っていたあの言葉、そっくりそのままお返ししよう。今宵、貴様は我にその命を奪われる」
「!!」
———呪禁。風蝕、孤高、懺悔の舞い。
「散華しろ、蟲毒の御霊」
「ギャアーーー!!」
その一言で怪物は完全に体を支配された。
途端に痣からは大量の蝶がたちまち出現すれば、その体は溶けてボロボロに崩れていく。
「ア゛アァァーー愚ガな!!タカガ下賤の陰陽師ゴトきに。グせぬ、グせぬグせぬグせぬ…」
化け物は激しい叫び声をあげた。
「ジネェェーー!!」
そして憎しみの籠った瞳で彼を睨み付ければ地面を大きく蹴った。崩れかけた体を引きずるようにして勢いを付ければ彼の方へ飛びかかっていく。
「あ、危ない!」
咄嗟に止めようと動いた私を彼は静かに後手で制せば、そのまま手を前へとかざす。
「最後の悪足搔きにしては中々やるではないですか。…だが死ね、所詮は邪気に押し負けた化け物め」
「ギャアァァァァァァァァーーー!!」
彼は冷たくそう言い放ち、大きく手を振ればみるみるうちに怪物の体はすり減っていく。
伸ばされた腕は彼の目の前で溶ければ軈て、怪物の姿は跡形もなくその場から消えてなくなってしまった。
『ピキ…ピキピキ』
奇怪な音が聞こえると、壊されていたと思っていた式神達が怪物の放つ瘴気に混じって再びその姿を現した。
「あれ?なんだか…」
二体はお互いにくっつき合えば一つへと纏まった。
やがて一つの大きな塊になると瘴気の中へと埋もれていく。
「グェェ…ゲボッ、、。ギ、ギザマ、我に何をジタ⁈」
すると直後、怪物の体全身には紫色の謎の湿疹らしき痣が無数に浮かび上がった。
瘴気の影響も重なるのか、体内からは内臓を蝕むかの如く激しい痛みに酷く苦しそうな顔をすれば彼をキッと睨みつけた。
「蠱毒。古代中国から伝来した呪法の一つさ。百虫を封じた壺の中、共喰いによって生き残った勝者の御霊を操り、採取された毒を対象者へ与える。さっき君が喰らったのは蟲蝶の毒だ」
彼は懐をあされば形代を取り出して見せた。
「お前と僕が見ていた世界は最初から違ったのさ。一回目に式神が破壊された時、僕は直ちに彼らの御霊を呪符へと封じた。つまり二回目以降に見た彼らは彼らであって彼らではない。本来は全くの別の代物さ」
「!!」
「そいつは壺の中でも唯一長年の間、喰われる事なく生き永らえた二つの神霊。一つは蝶、一つは蛇。二回目でお前に攻撃したあの時、彼らはその体へ大量の毒を打ち込んだ。そして今、全てが完了した」
彼はひらひらと楽しそうな様子で形代を怪物へと見せつければ、複数枚あるうちの中から一枚を取り出すとそこにフッと息を吹きかけた。
——ピキピキ…パキッ!!
形代は宙に浮かび音を立てて壊れれば、その役目を果たしたかのように地面へと落ちてしまった。
「先程、重複によって両者は混じり一つになった。だがお前の体を支配できるのはどちらか一方。そうして殺し殺された中で勝者を勝ち取った一方は、より一層強く洗練された御霊となり今ここに誕生する」
「ガアァァ!!」
見れば瘴気を纏う怪物の体からは一匹の美しい蝶が現れた。
羽をはためかせ舞い上がれば、体からは紫色の鱗粉を散布していく。
「グゥゥ…ありえぬ!!我は確ガに式神共をゴの手で殺ジダ!!こんな虫ゴトきものに、我の目が騙されていたとでもいうのガ!!」
怪物は苦しそうに呼吸を乱すと声を荒げた。
「ああ、そのこと。簡単さ、僕はこれとは別に君にはもう一つの術をかけた。それはね…」
幻惑の術。
「!!」
「はは、驚いたかい?前鬼達の姿を維持させ、実際はこの子達を使役していた事実さえ君は気が付かなかっただろう。だがそれ故の術だ。僕の目には最初から妖魔が虫と戯れているようにしか見えなかったけどね」
彼は驚いた顔のまま動けない怪物にクスリと笑うと人差し指を立てた。
「さて、そろそろ幕切れといこうか。君がさっきまで言っていたあの言葉、そっくりそのままお返ししよう。今宵、貴様は我にその命を奪われる」
「!!」
———呪禁。風蝕、孤高、懺悔の舞い。
「散華しろ、蟲毒の御霊」
「ギャアーーー!!」
その一言で怪物は完全に体を支配された。
途端に痣からは大量の蝶がたちまち出現すれば、その体は溶けてボロボロに崩れていく。
「ア゛アァァーー愚ガな!!タカガ下賤の陰陽師ゴトきに。グせぬ、グせぬグせぬグせぬ…」
化け物は激しい叫び声をあげた。
「ジネェェーー!!」
そして憎しみの籠った瞳で彼を睨み付ければ地面を大きく蹴った。崩れかけた体を引きずるようにして勢いを付ければ彼の方へ飛びかかっていく。
「あ、危ない!」
咄嗟に止めようと動いた私を彼は静かに後手で制せば、そのまま手を前へとかざす。
「最後の悪足搔きにしては中々やるではないですか。…だが死ね、所詮は邪気に押し負けた化け物め」
「ギャアァァァァァァァァーーー!!」
彼は冷たくそう言い放ち、大きく手を振ればみるみるうちに怪物の体はすり減っていく。
伸ばされた腕は彼の目の前で溶ければ軈て、怪物の姿は跡形もなくその場から消えてなくなってしまった。