白鬼の封印師 二

数日ぶりだ。
ようやく彼女と顔を合わせて話しができると、いざ扉を開けてみればそこにいた人物に目を疑った。

「あ゛?誰だオマエ」

そこには知らない男が時雨の側に立っていた。
口元を黒いマスクで覆い、目が合えば冷ややかな目で威嚇してくる。だが時雨に目を向ければニコリと微笑み、時雨もまた目が合うと微笑み返している。白夜の知らない二人だけの空間。白夜の中で何かが切れた。

「あ、白夜様!お帰りなさいませ!」

時雨は立ち尽くす白夜に気がつけばパタパタと駆け寄ってくる。

「時雨、お前まさか…」
「え?きゃ!」

それからの行動は早かった。
白夜は手に持っていた荷物をゴロゴロと床に落とせば一気に距離を詰めた。その身を肩に担ぎ込めば、軽く悲鳴をあげる時雨を無視して一気に自室へ飛んだ。

あの男は一体なんだ⁈
俺のいない間に何をしていた、、。
可笑しくなったのか、自分でも分からない嫌な思考ばかりが頭を駆け巡る。パニックになればいつもの冷静さを失い、白夜は時雨を抱えたまま自室の部屋を開けた。

「白夜様⁈一体どうされたのですか⁈」

ジタバタと暴れる時雨を片手に奥へ繋がる寝室に歩いていく。
扉を開ければやや乱暴に布団の上に時雨を放れば、時雨は困惑気味に白夜を見上げた。

「…白夜様?」

時雨が声をかければ白夜は何故か怒っているようにも見える。
顔からはゴッソリと表情が抜け落ち、怒りを込めた目だけが自分を捉えて離さない。
その姿に時雨は震え出した。

「…浮気か?」
「え?」
「まさか俺の留守のうちに他の男に目移りするなんてな」

時雨を押し倒せば、その場に組み敷いた。

「白夜様、何を…!」
「あの男は誰だ。なぜお前の部屋に他の男がいる。誰が他の男を部屋に上げていいなんて許可した?まさかこの俺が浮気されるなんてなぁ…」
「ち、違うんです!白夜様、、話を」
「言い訳なんていらねぇよ」

必死に時雨が説明しようと口を開くも、それを遮ぎるように白夜は口付けをする。
それには時雨も目を見開いた。
何度も角度を変えれば降り注ぐ口付け。
抵抗しようと手を伸ばすも白夜は両手を頭の上にひとまとめにすれば、身動きできない時雨を前に口付けする行為を止めない。

「ふっ、、、んっ、!!白夜様、、やめ」
「時雨、、ッ」

ブツブツと名前を呟けば貪るように時雨に口付ける白夜。
いつもの甘いキスとは異なる白夜の様子に恐怖心を覚えた。

「お前は、お前は俺のもんなんだよ!その心も、体も。全部」
「!」
「渡さねぇぞ…誰にも渡さねぇ!」

苦し気な瞳で顔を上げた白夜。
ようやく唇を離してくれたが時雨は息も絶え絶えで若干涙目になりながら白夜を見つめる。自分を縛る手の拘束はどんどんと強くなっていて、ギチギチと締め上げてくるせいか腕が痛い。怖くてたまらず、なんとか白夜の下から抜け出そうと体をくねらせるも男の力に敵う筈もない。

「白夜様、落ち着いて下さい」
「この体も許したのか?」
「…え?」

白夜はピタリと動きを止めれば拘束していた手を解いた。
驚く時雨の顔をジッと見つめていたが、反応がないのを悪く捉えたのか長い指でするりと頬を撫でる。そのまま自身の目元を手で覆えば乾いた笑みをこぼす。

「は、ははは。そうか…そうなんだな」
「白夜様」
「まさかとは思ったけど。でもそうなんだな」
「白夜様!」
「でも残念。渡さねぇし許さねぇから。お前が他のもんになるのも。俺から逃げることも離れることも許さない。お前は俺のもんだ。永遠に…俺だけのもんなんだよ」
「!!」

手の間から覗く瞳はアメジストに輝く。
獲物に狙いを定めた獣のような目つきで時雨を見下ろせば、逃げることもできずに怖くて硬直してしまう。

「…白夜様、んっ!!」

再び口付けをする白夜は徐に時雨の着物に手をかける。
それに時雨はゾッとした。
白夜が今からしようとしていることが嫌でも想像できてしまえば胸板を押して抵抗する。

「いや!!」

拒絶を込めて抵抗すれば白夜は瞬時に頭を片手で固定し、その手を離すことなく深く口付けする。声すら上げることもできなくなった時雨を前にその胸元の着物を大きく開けば白い首元が覗いた。白夜の理性はほぼ失いかけていた。