白鬼の封印師 二

「では業務内容は以上になりますが…」
「あ、そう?ならここで解散でいいぞ。俺はまだ買い物が残ってるから」

鬼頭家にまだ仕事を残してるからどのみち残業は確定。
最近は満足に寝ることもできないし、家に帰ることすらできていない。そのくせ主が鬼頭家に帰らないとなると余計に仕事の穴埋めをカバーする補佐がおらず、今日も徹夜コース行き確定だろう。

「若、鬼頭家に戻っても仕事は残っているのですよ」
「あ~適当にオマエがやっておいて」
「またそんなことを言って。補佐は私しかいないのですよ?このままでは実務破綻します」
「大丈夫だって。オマエは有能だし。俺もこれ済ませたら大人しく戻って仕事するからさ」
「…そう仰るのでしたら先に帰りますが。本当にお一人で大丈夫ですか?護衛をつけておいた方が」
「必要ない。ジロジロ監視されてちゃ集中できるかよ。婚約者のプレゼントぐらい自由に選ばせてくれ」

視界にこそ見えないが気配で分かるらしい、店の周囲を囲む護衛の存在がさっきからチラつくのか、白夜は熱心に商品と睨めっこしているようで実際はイライラしていた。
それでも婚約者のために土産を買って帰るつもりなのだろう。
ここ数日間、仕事が立て込んだせいでまともに顔すら見に行けてない。こうして外出の際にお土産をたくさん買って会える日を今か今かと楽しみにしていたのだ。文句を言いつつも仕事はキッチリこなし、相手に少しの隙も見せることはない。

「…今更ですが、これ全て彼女にですか?」
「まあな。ここ数日まともに会えてねぇし、あの一件以来仲直りもまだできてない。早くアイツに触れたいんだ」

俺さ、、、
そう言い黙る主の顔に首を傾げる。

「こう見えて結構参ってんの」

振り返った顔は無邪気なあどけなさを残しつつも困ったように微笑んでいた。
初めて見た…
冷酷な顔と佇まいで相手を見下ろせば感情が揺らぐことさえない。
そんな普段の彼からはとても想像できない顔。
彼女が絡むと彼はこうも変わってしまうのか。

「楽しそうですね」
「愛する人になら何をしても俺は嬉しいみたいなんだよね。この通り懐の財布もゆるゆるだし」
「あまり羽目を外しすぎないように。それと帰りの道中、十分お気を付け下さい」
「へいへい。お前は心配しすぎ」
「貴方様だからです。そのご身分ともなれば、寄って来る者も多岐に渡るでしょうから」

撤夜は一礼するとその場を離れて行く。
ひらひらと後ろ手に撤夜を見送った白夜は数あるアクセサリーの中から自分が最も一押しだと感じたものを手に取る。

「うん、悪くない」

紫色の宝石があしらわれたネックレス。
控えめだがそれが逆に上品な質感を醸し出し、彼女の細く綺麗な首によく似合うだろうと、想像したら口角が上がる。

「早くお前に会いたいよ、時雨」

愛する彼女の名を呼べばその顔を思い出す。
会えていなかった分のストレスなのか、ハッキリ顔を思い出してしまってからは早くその身に触れたくて仕方がない。無自覚にもうっとりと顔を綻ばせると立ち上がる。そのままスマートな足取りで会計まで足を運べば女性客からの熱い視線が強くなる。見惚れて白夜からは目が離せなくなっているようだ。中にはその美しさにに失神してしまう者さえいる。
だが多くの妖は恐縮し一礼する。
白夜の正体が分かってしまえば恐ろしくて体を震わせ道を開けていく。そんな妖達を気にも留めず、白夜はご機嫌に商品の購入を済ませれば軽やかに店を出た。