誰もが憧れる長身。
着瘦せするためか外からはほっそりと見えるその体も、脱げば無駄に脂肪のない鍛え抜かれた筋肉が顔を出す。
顔は百人すれ違えば百人が振り返るほどの美貌。
そんな完璧な風貌で膨大な妖力を日々垂れ流しにしては、相手を強く威圧するお姿。
「…これで性格さえ完璧ならいいんですけどね、、」
「なんか言ったか?」
「いえ。こんな所で油を売ってる暇が我々にはありません。早く出ますよ」
「まあ待てって。そうせかさなくとも折角来たんだ。お前もちっとは楽しめよ」
全くこっちの気も知らないで。
のほほんと店内の商品を物色する主人に呆れてしまう。
この人の場合、こうして一度スイッチが入ればもう手がつけられない。
さいあく、駄々っ子をこねれば床に転がる幼児と変わらないだろう。この様子では早々に店を出る気などないということを、撤夜は瞬時に察した。
「貴方、先程からそのようにして、商談が一つ終わるごとに同じような店ばかり入ってますよね?」
「…」
「全く、当主様への報告もございますのに。残りの仕事に支障が出始めているのは大問題ですよ?」
「だからこそ、入った先々での商品はちゃ~んとこうして買ってやってんだろ?これも売上向上に繋がるんだ。文句の付けようねぇだろ」
見れば知らぬまに商品を購入していたのか、手にはいくつかの紙袋をぶら提げている。まさかこの男、仕事を買い物と勘違いしているのではないか?
「仕事しに来たんですよね?」
「おう」
「なら貴方にとって、仕事とは一体何を指すのですか?」
「お得なクーポン稼ぎ」
何を言っているのかいまいち理解できない。
ああ、なんか段々イライラしてきたような気がする。
「ふざけてるんですか?」
「べ~つに~?つーか、お前は普段からビシッとしすぎなんだよ、ちっとは気抜けって。そんなんじゃいずれ禿げんぞ?確かお前の家系って代々禿げてる奴が謎に多かったよな?あれストレスじゃね?」
「違いますただの遺伝的問題です。父の毛はまだご健在ですのでご安心を。ですがそうですね、受け持ちの上司がこうも不真面目ともなれば、いずれは優秀な部下がストレスによって禿げヅルになる未来もそう遠くはありませんよ」
「だ~ってお前よく考えてみろよ。実際、仕事もせずに金さえ入ってくんなら誰もこんなんしねえって」
白夜は目を外すことなく前を向けば、面倒くさそうに口を開いた。
「そう考えれば、クーポンつー制度はよくできてると思わね?割引や無料にするだけで顧客満足度や売り上げ向上にも繋がるんだから」
「何が仰りたいので?」
「ようは足らない精神費やしてまで仕事に打ち込む暇あんなら、お得なクーポン貰って低コストで客集めろってこと」
「お、これいいね!」なんて言って、こちらに顔を向けることなく商品と睨めっこする白夜に撤夜は精神の限界を感じた。
自分の手元に残る分厚い書類の数々とタブレット。
他の者ならとっくに悲鳴をあげて逃げ出している頃だ。
つまり主人は無駄な仕事に費やす時間があるなら、少ない労働で多くの力を動かせと言いたい訳か。
できることならとっくにやってる。
だが万年人手不足なのだ。
この唯我独尊の破天荒男についていける者がおらず、皆して半年も経たないうちにやめてしまうから。
これを自分は胃薬だけで長年対処しているのだ。
むしろ褒めて頂きたいほどだ。
「貴方が仕事をしたくないニート気質だということはよく分かりましたよ」
「ヒモよりマシだろうが」
「ですがこの案件は私一人では荷が大きすぎます。お願いですから仕事して下さい」
「パ~ス、そこは使えねえ。とてもじゃねぇが出向いたとこで、この先役に立つ情報を持ってるとは思わない」
「資料をご覧になったので?」
「いいや?ぶっちゃけ資料なんざ目を通したとこで時間の無駄。無駄なコストかけてまで気を配る余裕なんざ俺にはねえ」
着瘦せするためか外からはほっそりと見えるその体も、脱げば無駄に脂肪のない鍛え抜かれた筋肉が顔を出す。
顔は百人すれ違えば百人が振り返るほどの美貌。
そんな完璧な風貌で膨大な妖力を日々垂れ流しにしては、相手を強く威圧するお姿。
「…これで性格さえ完璧ならいいんですけどね、、」
「なんか言ったか?」
「いえ。こんな所で油を売ってる暇が我々にはありません。早く出ますよ」
「まあ待てって。そうせかさなくとも折角来たんだ。お前もちっとは楽しめよ」
全くこっちの気も知らないで。
のほほんと店内の商品を物色する主人に呆れてしまう。
この人の場合、こうして一度スイッチが入ればもう手がつけられない。
さいあく、駄々っ子をこねれば床に転がる幼児と変わらないだろう。この様子では早々に店を出る気などないということを、撤夜は瞬時に察した。
「貴方、先程からそのようにして、商談が一つ終わるごとに同じような店ばかり入ってますよね?」
「…」
「全く、当主様への報告もございますのに。残りの仕事に支障が出始めているのは大問題ですよ?」
「だからこそ、入った先々での商品はちゃ~んとこうして買ってやってんだろ?これも売上向上に繋がるんだ。文句の付けようねぇだろ」
見れば知らぬまに商品を購入していたのか、手にはいくつかの紙袋をぶら提げている。まさかこの男、仕事を買い物と勘違いしているのではないか?
「仕事しに来たんですよね?」
「おう」
「なら貴方にとって、仕事とは一体何を指すのですか?」
「お得なクーポン稼ぎ」
何を言っているのかいまいち理解できない。
ああ、なんか段々イライラしてきたような気がする。
「ふざけてるんですか?」
「べ~つに~?つーか、お前は普段からビシッとしすぎなんだよ、ちっとは気抜けって。そんなんじゃいずれ禿げんぞ?確かお前の家系って代々禿げてる奴が謎に多かったよな?あれストレスじゃね?」
「違いますただの遺伝的問題です。父の毛はまだご健在ですのでご安心を。ですがそうですね、受け持ちの上司がこうも不真面目ともなれば、いずれは優秀な部下がストレスによって禿げヅルになる未来もそう遠くはありませんよ」
「だ~ってお前よく考えてみろよ。実際、仕事もせずに金さえ入ってくんなら誰もこんなんしねえって」
白夜は目を外すことなく前を向けば、面倒くさそうに口を開いた。
「そう考えれば、クーポンつー制度はよくできてると思わね?割引や無料にするだけで顧客満足度や売り上げ向上にも繋がるんだから」
「何が仰りたいので?」
「ようは足らない精神費やしてまで仕事に打ち込む暇あんなら、お得なクーポン貰って低コストで客集めろってこと」
「お、これいいね!」なんて言って、こちらに顔を向けることなく商品と睨めっこする白夜に撤夜は精神の限界を感じた。
自分の手元に残る分厚い書類の数々とタブレット。
他の者ならとっくに悲鳴をあげて逃げ出している頃だ。
つまり主人は無駄な仕事に費やす時間があるなら、少ない労働で多くの力を動かせと言いたい訳か。
できることならとっくにやってる。
だが万年人手不足なのだ。
この唯我独尊の破天荒男についていける者がおらず、皆して半年も経たないうちにやめてしまうから。
これを自分は胃薬だけで長年対処しているのだ。
むしろ褒めて頂きたいほどだ。
「貴方が仕事をしたくないニート気質だということはよく分かりましたよ」
「ヒモよりマシだろうが」
「ですがこの案件は私一人では荷が大きすぎます。お願いですから仕事して下さい」
「パ~ス、そこは使えねえ。とてもじゃねぇが出向いたとこで、この先役に立つ情報を持ってるとは思わない」
「資料をご覧になったので?」
「いいや?ぶっちゃけ資料なんざ目を通したとこで時間の無駄。無駄なコストかけてまで気を配る余裕なんざ俺にはねえ」