「…ぐれ、時雨」
ゆさゆさと体を揺さぶる感覚。
自分の名前を呼ぶ声に意識を取り戻せば目を開く。
障子の隙間から差し込んだ朝日に目を細めれば、同時に視界へ映ったのは天井を背に時雨を見つめるアメジストの瞳。
「時雨」
彼が私の名前を呼ぶ。
ああ、なんて綺麗なんだろう。
朝日に照らされた白い髪も。
アメジストを閉じ込めた瞳も。
全てが彼を投射する為だけに朝日が集中しているようにも見えた。
「おはようございます。白夜様」
時雨はニコリと呼びかけに応えるよう微笑んだ。
するとこちらへ伸びてくる手。
着物から出る腕は逞しくも滑らかな肌質で、サラリと頬に触れた優しい手触りは撫でるたび木蓮の香が鼻をくすぐった。
「うなされていたけど大丈夫か?」
「大丈夫です。ただ…」
「?」
式神のいる精神領域での事を話そうとして思いとど止まる。
彼らが結局何を伝えたかったのか。
それは最後まで分からずにいたから、時雨は説明しようにも困ってしまう。
「実は…式神の領域に飛ばされていました」
あの日以来、式神が時雨に会うことも体から出てくることも無かったため暫くはそっとしておいた。だがずっと閉じ込めておくのも正直どうかと思っていた。そんな矢先、こうして彼らの方から呼んでくれたのは実に幸運だった。
「アイツらが…。体に異常は?」
「大丈夫です。別に何かされたわけではありませんし」
「それでも大事を取ってこのまま寝てた方が」
「いえ、本当に何もされてませんから。少し話しかけられただけで」
「式神と話し?訓練もされていない人間が式神とコンタクトを取るのは不可能な筈だぞ?」
「え、そうなんですか⁈」
自我を保つ式神はそれだけ攻撃性も高く能力に優れる。
本来、式神とは術師を援護するのを目的とし、使いこなすには訓練が必須。そんなだから異能も持たない時雨が高位レベルの契約に成功したともなれば白夜が黙ってない。八雲家での事件をきっかけに白夜の時雨に対する過保護と溺愛ぶりは日に日に増すこととなった。
「もう朝ですね。白夜様、朝ごはん食べに行きましょう!」
「あ、おい!式神の話の途中だろ」
「今日のご飯はなんでしょうか。私お腹空きました」
布団から出ればせっせと支度に取り掛かる。
未だ納得のいかない顔を浮かべる白夜を無視して屈伸と共に腕を大きく上に伸ばせば、不意に視線を感じた。見れば直ぐ後ろ、時雨の真後ろにはピタリと白夜が張り付き見下ろしているのが分かった。
「ヒヤッ…もう、脅かさないでください」
「……」
「白夜様?聞こえていますか?」
時雨が声をかけるも応答がない。
白夜は突如スンっとした真顔で時雨を見下ろせば、やがて何を思ったのかニィ~っと口角を上げた。時雨は嫌な予感がして後ろに下がれば、白夜も続くようにジリジリと前に出る。
これは危険信号だ。
時雨は瞬時にそれを察知すれば逃げるように彼から離れようと駈け出すも、白夜はその腕をガシッと掴めば時雨を壁に押し付けた。
「白夜様?一体どうされたというのです!」
たまらず叫べばこちらに伸びてきた手。
怖くなって咄嗟に目をつぶれば、胸元に感じる感触。
不思議に思いゆっくりと目を開ければ、白夜の視線は時雨ではなく…
「ん~…お!なあ、デッカくなった?」
「ッ~~~~//////この変態!!」
朝一、時雨の声が鬼頭家に響き渡った瞬間だった。
ゆさゆさと体を揺さぶる感覚。
自分の名前を呼ぶ声に意識を取り戻せば目を開く。
障子の隙間から差し込んだ朝日に目を細めれば、同時に視界へ映ったのは天井を背に時雨を見つめるアメジストの瞳。
「時雨」
彼が私の名前を呼ぶ。
ああ、なんて綺麗なんだろう。
朝日に照らされた白い髪も。
アメジストを閉じ込めた瞳も。
全てが彼を投射する為だけに朝日が集中しているようにも見えた。
「おはようございます。白夜様」
時雨はニコリと呼びかけに応えるよう微笑んだ。
するとこちらへ伸びてくる手。
着物から出る腕は逞しくも滑らかな肌質で、サラリと頬に触れた優しい手触りは撫でるたび木蓮の香が鼻をくすぐった。
「うなされていたけど大丈夫か?」
「大丈夫です。ただ…」
「?」
式神のいる精神領域での事を話そうとして思いとど止まる。
彼らが結局何を伝えたかったのか。
それは最後まで分からずにいたから、時雨は説明しようにも困ってしまう。
「実は…式神の領域に飛ばされていました」
あの日以来、式神が時雨に会うことも体から出てくることも無かったため暫くはそっとしておいた。だがずっと閉じ込めておくのも正直どうかと思っていた。そんな矢先、こうして彼らの方から呼んでくれたのは実に幸運だった。
「アイツらが…。体に異常は?」
「大丈夫です。別に何かされたわけではありませんし」
「それでも大事を取ってこのまま寝てた方が」
「いえ、本当に何もされてませんから。少し話しかけられただけで」
「式神と話し?訓練もされていない人間が式神とコンタクトを取るのは不可能な筈だぞ?」
「え、そうなんですか⁈」
自我を保つ式神はそれだけ攻撃性も高く能力に優れる。
本来、式神とは術師を援護するのを目的とし、使いこなすには訓練が必須。そんなだから異能も持たない時雨が高位レベルの契約に成功したともなれば白夜が黙ってない。八雲家での事件をきっかけに白夜の時雨に対する過保護と溺愛ぶりは日に日に増すこととなった。
「もう朝ですね。白夜様、朝ごはん食べに行きましょう!」
「あ、おい!式神の話の途中だろ」
「今日のご飯はなんでしょうか。私お腹空きました」
布団から出ればせっせと支度に取り掛かる。
未だ納得のいかない顔を浮かべる白夜を無視して屈伸と共に腕を大きく上に伸ばせば、不意に視線を感じた。見れば直ぐ後ろ、時雨の真後ろにはピタリと白夜が張り付き見下ろしているのが分かった。
「ヒヤッ…もう、脅かさないでください」
「……」
「白夜様?聞こえていますか?」
時雨が声をかけるも応答がない。
白夜は突如スンっとした真顔で時雨を見下ろせば、やがて何を思ったのかニィ~っと口角を上げた。時雨は嫌な予感がして後ろに下がれば、白夜も続くようにジリジリと前に出る。
これは危険信号だ。
時雨は瞬時にそれを察知すれば逃げるように彼から離れようと駈け出すも、白夜はその腕をガシッと掴めば時雨を壁に押し付けた。
「白夜様?一体どうされたというのです!」
たまらず叫べばこちらに伸びてきた手。
怖くなって咄嗟に目をつぶれば、胸元に感じる感触。
不思議に思いゆっくりと目を開ければ、白夜の視線は時雨ではなく…
「ん~…お!なあ、デッカくなった?」
「ッ~~~~//////この変態!!」
朝一、時雨の声が鬼頭家に響き渡った瞬間だった。



