白鬼の封印師 二

中は物が少なくサッパリとした空間。
縁側に目を向ければ不思議と外は夜になっていて苔で覆われた石と蓮の池。各ポイントには角状の竹でできた照明ライトが庭全体を照らしていた。傍らにはいくつか紅葉樹林の枝が垂れ下がり幻想的。

「久しいな。あれから変わりはないか?」
「はい!邪気の影響も受けなくなりました。白夜様のおかげです」
「そうか。アイツがいれば問題もないだろう。それで、その後ろに控えるのが…」

深夜が視線をずらせば時雨の斜め後ろ、扉の前で控える青龍。立ったまま後ろ手に黙って静観する姿を見た深夜は興味深そうに目を細めれば、青龍は怪訝な顔で警戒モードに入ってしまう。

「はは、なんとも警戒心の強い奴じゃな。近づくこともせず、私を警戒していると見た」
「私の神獣で青龍といいます。前に拾った白蛇の化身で眷属でもあります」
「ほう…青龍とは、、それほど強力な神獣が其方と契約を交わしたと申すか。なるほど…神獣の加護があれば妖の邪気にも対応は効く。こうして姿を見るのは初めてのことだが…」

神獣が人型に化ける姿に興味を持った深夜に対し、青龍は睨みをきかせて尚も威嚇している。青龍は鬼である深夜がいっそう気に入らないようであった。

「ご当主様にはもっと早くにお伝えするべきでした。申し訳ありません」
「よい。白夜から大まかな話は受けている。八雲家の一件で其方はその身に大きな傷を負った。契約前と後では神獣の加わる力も違う。あの時は加護は授かっても契約を結んだ訳ではないのだな」
「はい。青龍を見つけた日は契約とは名ばかりで実際は加護だけ受けました。ですが今は契約により、私の体は邪気による被害を受けずとも済むようになりましたので、彼には感謝しています」

時雨の体を取り巻く二つのオーラ。
一つは婚約者である白夜のもの。
もう一つは青龍のもの。
二つの作用はいずれも時雨が隠世で生きていけるよう、厳重に彼女を守っている。

「そうか。神獣と契約をすれば其方も今後安心だな。…例えその身に異能がなくとて」

その言葉に驚き、顔を上げた。
先ほどまでの態度とは一変、深夜は冷ややかな瞳で時雨を見つめれば、その底知れぬ冷酷なオーラに時雨は顔を真っ青にさせた。そこでようやくこの場所に呼び出された言葉の裏を理解することができたのだ。

「私が久野家から要求したのは異能の術師。その血を色濃く受け継いだ娘であったはず」
「ご、ご当主様!!私は、、」
「だが其方を見て驚いた。封印はおろか、その身からは異能の気配すら感じ取れない。それが本当なら、其方はここ数か月、鬼頭家を欺いてきたというわけになるが」
「あ…ああ、、」

冷や汗が止まらない。
怖い。
流石は鬼頭家当主だ。
異能を持たない自分を来た時に悟り、更には八雲家での一件が時雨本人に異能を持たないことを完全に決定づけた証拠として抑えられてしまった。白夜がいない今、鬼頭家当主を前に時雨はどうすることもできず虫の息であった。

「…貴様、殺されたいのか?」

だが不意に頭上からは声が聞こえれば時雨の直ぐ脇の横、青龍の姿があった。どこから取り出したのか、右手には青く光る刀剣を握りしめれば酷く怒りのこもった顔で体からは青いオーラを放つ。殺気を効かせれば刀剣の先を深夜の首元に向けていた。

「我が主に手を出してみろ。貴様を殺す」
「…ほお、鬼頭家当主であるこの私に刀を向けるか」
「黙れ。貴様など所詮は妖の端くれ。我らが神獣に妖如き貴様が敵うとでも?」

青龍の脅しに深夜は臆することもせず、ただ黙って落ち着いていた。

「端くれを謳うなら貴様も同じだろ。神の元を離れ地に降り立った神獣相手に臆するほど、私の力も劣ってはいないぞ(笑)」
「貴様の意思は関係ない。俺は時雨殿を御守りすること以外、この世界に用などない。例え貴様が妖家のトップとて妖は妖。四神相手に勝てると本気で思うか」
「ならば鬼神相手には敵わぬと?」
「ッ~!!貴様ァ!!!」

それは青龍にとっては地雷だったようでマスク越しに瞳には殺気を帯び、刀剣をグッと深夜に押し付ければ首筋からは血が滴る。本気で殺そうとしていた。微動だにせず静かに笑う深夜を見兼ね、時雨は慌てて青龍の腕を掴んだ。