白鬼の封印師 二

時雨は屋敷へ戻ると深夜の元に向かっていた。
お香は事情を聞くと快く案内をしてくれる。
本当なら一人でも行けたはずなのだが、どうにもこの屋敷は大きくて複雑に入り組んだ構造をしているため未だ慣れない。時雨の知らない部屋もまだまだいっぱいあった。

「すみません。一人で行けたら良かったのですが」
「いえいえ、何も気にする必要ありません。本来は当主様の部屋まで行くことは出来ませんし」
「え、どういう事ですか?」
「当主の部屋は鬼頭家でも最高位にランクする特殊な異空間なんです。だから普通の世界に存在することはなく、当主様の妖力を辿らない限り、使用人といえど見つけることはできません」
「お香さんは分かるんですか?」
「ふふ、私は当主様の世話係でしたから。時雨様にお仕えするようになった今でも、こうして部屋へと通じる道を開けておいでのようです」

お香は笑いながら前を歩いていくが、時雨にはここがどの通路で何を目印に彼女が進んでいるのかが皆目見当もつかなかった。

「(お香さんって…一体何者?)」

使用人の中でも当主様が認めるほどの存在。
当主様が直属に自分の世話係に彼女を任命したとは言っていたから、まずその信頼性を高く評価していることは確か。

「あの、お香さんって強いんですか?」
「は!もしや…時雨様には私が弱い低級鬼に見えていたと⁈」

目をうるうるさせてコッチに振り向いたお香。
時雨は慌てて首を振り否定する。

「いえ!そういう事ではなく。ただ当主様からの信頼が高いなと感じたので。ひょっとして妖力に関係でもあるのかと思いまして」
「ふふ、冗談ですよ(笑)。まあでも力なら、私もそこらの野次馬ぐらい鬼火で一吹きです」
「…ひ、一吹き、、、」

お香はそう手の平から小さな鬼火を出して見せた。
ポ~ッと燃える炎。
自慢げに見せてくるお香の姿に時雨は苦笑いする。

「でも若様の妖力に比べたら私などミジンコです。若様は妖力を少し放つだけで上級妖とて失神させてしまいますから」
「それもそれでヤバいと思うのですが…」

確かに白夜様なら可能だろうけど。
妖は人間の何倍も高い身体能力と知性を合わせ持つ。
もし人間が妖の妖力なんかくらった暁には…即死レベルだ。

「もしや若様なら、三大妖家を人差し指一本だけで弾き飛ばせるかもしれませんね」
「いや、より恐ろしいですよ」

とんでもない人を好きになってしまったかも、、、
う~んと真面目に考え込むお香を横目に改めて自分の置かれた立場を振り返る。イケメンだけでは収まらない白夜様。そんな彼に自分は花嫁として嫁いでしまったんだから。よく考えたらプレッシャーが半端ない。

「非常に注意深く思慮深い当主様とは反面、若様は自由奔放な方ですからね~。当主様もそこだけは心配のようでしたし。私共も当時はとても不安でした。でも今は時雨様がいらっしゃいますし。一安心ですね!」
「うっ、またそうやってプレッシャーを上げる…」