僕は、こっちに来る地球人と接触するため、トンネルの中へと、忍び足で入る。操るためには、距離が近くなければいけない。
 見つかってしまったら、「美味しそう」などと宣い、本当に食べられてしまうかもしれない。地球人なら、ありえる。そうなる前に、操らなければ!
 歩くごとに、僕の不安感はむくむくと膨れ上がっていき、もう内側から破けてしまいそうだった。

 僕の身体が小さかったからか、歩いていても、今のところは、ばれていなかった。
 その時、地球人が足を止めた。声というよりも騒音を発しながら、二人は何かを会話していた。身体が大きいため、声も大きいのかもしれない。
 気づかれたと思ったのだが、どうやら僕のことを咎める気配はなかった。僕は彼らに、おそるおそる近づく。
 傍まで近づくと、流石にばれたのか、僕のことを見つめながら、地球人の一人が叫び声を上げ、それにつられたのか、もう一人も鬱陶しい喚き声を上げた。
 「すごい美味しそー!」「俺が食うんだからな!」などと興奮の心持ちで、叫んでいるのかもしれない。
 僕は急いで、二人をじっと、交互に睨みつけながら、動きを操ろうと試みる。
 結論から言うと、極度の緊張感からか、一人にしか効かなかった。
 僕の星で今流行っているダンスを踊っている地球人を見ると、僕は途端に緊張感がほぐれ、なんだか楽しくなってきてしまった。