頭の頂部だけが灰色の地球人なんて、きっといない。これだと、ばれてしまう。
 全力を振り絞って、着ぐるみを上へ上へと引っ張るのだけれど、焦れば焦るほど不器用になり、やはり頭が隠しきれない。
 その時、耳障りな声と、ドカンドカンと響く足音が僕の心をさらに揺らした。来たかもしれない。地球人が、来たかもしれない。食われる。
 地球人を操るという目的があったため、地球人が近くにいるこの状況は、僕にとって、いや、上司にとって好都合だった。
 早く帰りたい気持ちが僕をせき立てるため、もう、この格好でいいや、と半分自棄になる。
 僕は、巨大な半円型のトンネルへと歩を進める。反対側から、地球人がやってきていたのだが、その大きさに、僕は臆してしまう。
 「地球人はきっと、私たちと同じくらいのサイズだろう。心の大きさは全然違うんだけどな」
 その上司の言葉が、全くのデタラメであることが判明した。全然違うじゃん。すげえでかいじゃん。
 「上司の言葉が間違っていたということは」、僕は考える。それを知っただけでも、大きな収穫ではないか? みんなから褒められて、昇格できるのではないか?
 帰りたい僕が、頭というよりも、身体全体をのぞかせてくる。いや、ダメだ。僕は臆病な性格を打破すべく、地球に来たんだから。