僕はその冗談ともつかぬ発言に、震え上がる。
 「じゃあ、じゃあ、地球の担当は32で決まりですね」
 「えー、俺、絶対嫌だよ」
 「いや、私は49、お前を地球に派遣することにした」
 他のみんなの安堵の溜め息が、僕の心を攻撃してきた。
 「な、なんでですか?」
 「49、お前は他の奴に比べて、ちょいとビビりだ。だから、地球という凶暴極まりない星に派遣することによって、49を強くしたい、と考えたんだ」
 「あの、ほんとに、嫌なんですけど」
 僕はほとんど、泣いていた。
 「49、もしお前が地球に行って、地球人を一人でも操ることができれば、昇格してやろう」
 「昇格?」
 「そうだ。俺がお前を呼ぶ際、『お前』じゃなくて、『あなた』になる」
 「やめておきます」
 ここからは、上司の口八丁に乗せられて、僕は、地球へと行く羽目になった。
 
 僕は、地球時間の夜九時ごろ、日本という国の、トンネルと呼ばれる付近に着陸した。移動機械から降りる。
 降りた途端、僕の心はさらに落胆の渦へと飲み込まれた。早く帰りたかった。
 僕は地球人に、異星人とばれぬよう、会社が作成した『なりきり着ぐるみ~地球人編~』なるものを着る。
 ピチッとした着ぐるみの中に足から入れていくのだが、最後の最後で僕はひどく焦った。
 素材が悪かったのかもしれない、頭の頂部が着ぐるみに入りきらなかったのだ。