「【身体強化】【速度向上】【防御】【能力低下】【静止】【破壊】」

 アストライアの魔法の後方支援が加わり、シンの戦闘能力はさらに増幅した。

「剣舞【夏椿の舞】」

 凛と美しく在る椿のように。
 シンは剣舞【夏椿の舞】で魔獣を討伐する。
 アストライアに向かってくるものは全て排除し、切り裂いていく。

「強くなったわね、シン」
「! 全て、貴女の隣に並ぶためです」
「ふふっ、ありがとう」

 昔のシンだったならば、絶対に生き残れない。シンは強くなった。全てにおいて、愛しい主人のために。

「それでもまだ、貴女には並びません」
「謙遜しないで。もうとっくに抜いているわ」
「いえ。それは剣術のみのこと。魔術では叶いそうにありません」
「なら、今度一緒にやる?」
「っ、いいのですか?」
「もちろんよ」

 可愛い従僕のためなら、いつだって。

「魔力は余ってる?」
「はい」
「少しだけもらってもいいかしら?」

 何をする気だ、と思ったが、シンは何も聞かなかった。

「俺は貴女のものです。どうぞ、お使いください」
「ありがと。じゃあ、こっちにきて、シン」

 シンはアストライアに跪く。
 アストライアはシンに触れ、魔力を奪い、自身の魔力と合わせて特大の魔法陣を作る。

「っ、これは……」
「失敗したらごめんなさい。でも、その時はシンが守ってくれるでしょ?」
「当然です」
「ふふっ、知ってる」

 そのままアストライアは魔力を込め、一気に放出した。

「【絶対詠唱魔法 氷柱】」

 アストライアの指定した座標に太く、透明に輝く氷柱が突き刺さる。
 絶対詠唱魔法 氷柱
 アストライアの魔力の八割とシンの魔力の六割を使って発動された絶対詠唱魔法は、想像以上の効力を示した。
 わっと会場が盛り上がる。
 二人は魔獣の討伐に成功したのだ。