しん、と静まり返った映画館。


私も遥陽さんもそれ以上話すことはしないまま、間のなくして会場が暗くなる。


だけど私の心臓はドキドキしていて、終始映画の内容は頭に入ってこなかった。代わりに遥陽さんの笑顔が頭の中で埋め尽くされる。


すぐ隣で座ってみている遥陽さんの顔をそっと見ると、映画に集中していた。


多分遥陽さんは興味のない恋愛映画。


なのに、私の希望を叶えるために一緒に見てくれている。チケットのことはちょっと疑問に思ったけどそれ以上のことを遥陽さんは私にくれた。


遥陽さんのことを愛おしいと思った。


この人が、好き……だと思った。



『私っ、あなたのことが好きっ!ずっとそばにいてください!』



映画の最後で告白するシーンがあった。


真っ直ぐに想いを伝えるヒロインに憧れた。私も、あんなふうに想いを伝えられたらな。


だけど、自分からはきっと言えない。


ずっと楽しみにしていた映画なのに、また少しモヤモヤが復活してしまった。