はっとして思い出したお金のこと。


ゴソゴソとカバンから財布を取り出そうとしたのにそれを遥陽さんに止められた。



「で、でも……」



映画のチケットって結構するよね?


それを2人分って……。なんだか申し訳無い…。




「いいから。ね?」


「……あ、ありがとう、ございます」



遥陽さんの笑顔の圧に負けてここは素直に受け取ることにした。だけどなんだか申し訳なさでいっぱいになり、1枚のチケットが重く感じる。


普通に割り勘とかで良かったのに……。


こんなふうに思う私は可愛くないのかな。きっとほかの女の子なら素直に喜んで受け取るはず。


私、可愛くない……。



「そろそろ映画館に行こうか」


「そうですね!早めに行っちゃいましょう!」



少しモヤモヤした気持ちがあったけど気付かないふりをして笑顔で頷く。


ダメだ。


こんな気持ちは忘れて映画に集中しよう。チケットをポケットにしまう。私と遥陽さんは映画館へと向かった。