私は不思議に思いながらもカーテンに近寄りそっと開く。だけど部屋の窓からは曇りがかった空しか見えなくて、月の姿はなかった。
「えっと……見えないです」
『そっかー。残念。俺の部屋からは月、綺麗に見えるんだけどな』
「そうなんですね」
なんで月の話をしているんだろう?
と思いながら空を見上げる。月は見えなかったけど雲の隙間からちらほらと見える無数の星は見えた。
『……引き止めてごめんね。それじゃあ……おやすみなさい』
ードキン。
「……おやすみ、なさい」
遅れて私がつぶやく。
すると向こうがふっと笑ったのがわかった。そして電話が切れて画面が暗くなる。
私はスマホを布団の上に放り投げ、枕に顔を押し付ける。
……私、多分今顔真っ赤。
こんな顔、誰にも見せられないよ。