急に真面目な話をするからびっくりしたけどなんだかお母さんの言葉がストン、と胸のあたりに響いた。
「……お母さんも高校生の頃、恋をしていたからよくわかるのよ。そんなに簡単に高校生の恋って実らないわよね」
「そう、なんだ」
巾着をぎゅっと握りながらお母さんの話に耳を傾ける。まるで私の不安を知っているみたいな感じで話していた。
お母さんにもそういう過去があったんだね。
私は、遥陽に言いたいことを言えているだろうか。
ちゃんと、恋をしているのだろうか。
「この話はお父さんには内緒ね。あの人、妬いちゃうから」
「わかってるよ」
少しの沈黙の後、お母さんが人差し指でシーっと合図を出す。
そのおちゃめな姿にふっと笑ってしまった。
「そろそろ家出た方がいいんじゃない?」
それからしばらくお母さんと話をしていたらあっという間に家を出る時間になった。
時計を見ると午後4時を指していた。