ドキンドキンと心臓の音が部屋に響いていた。
「俺の事、さん付けじゃなくて呼び捨てで呼んでよ。それと、敬語はもういらない。タメ口で、話してほしい」
「え?いいんですか?」
突然のお願いに、目を見開く。
そんなことを言われるなんて思わなかったから、驚いたけど嬉しくなった。
「だって付き合ってまだ敬語とか、なんかよそよしいじゃん。もう他人じゃないんだし、もっと俺に甘えてよ。俺の彼女なんだから、遠慮しなくてもいいよ」
名前を呼び捨て……。
男の子のことを名前で呼び捨てにするのは初めてかもしれない。小学生の頃も中学生の頃も君付けか苗字だったから。
気はずかしいけど、遥陽さんのことを名前でちゃんと呼びたい。タメ口で話したい。
「えっと、じ、じゃあ……遥陽……あ、ありがとう」
何を話していいか分からなくて何故かお礼を言ってしまった。噛み噛みで上手く名前も言えなかった。