見事な逆三角形を誇る漆黒の上半身があらわとなる。筋肉の隆起に合わせて、艶が波打っていた。
(ひぇ!?)
その艶めかしい身躯から、私は慌てて目を逸らす。
「ちょぉおい!? アンタ、もうちょい気ぃ使えや! ここ、女の子二人おるんやで!?」
パティの苦言を気に掛ける様子もなく、レオポルドの着替える音は続く。
「アリス」
やがて音が止まると同時に、彼は私の名を呼んだ。
「これでどうだ?」
恐る恐る、声の方を振り返る。
(あ……!!)
いた。
イベント予告で見たのとそっくりな服装の、レオポルドが目の前に立っていた。
「限定レオぼッ、ゴホッゴホゴホッ!!」
あまりの衝撃に、勢いよく身を起こしむせる。
「アリス、大丈夫か」
「だ、だいじょ……」
ベッドから降り、震える足でレオポルドの周りをゆっくり一巡する。
「すごい、360度眺められる……!」
「アリス」
薄いシャツから透けて見える隆々とした体躯のライン、引き締まったウエストと、腕まくりした白いシャツから覗く逞しい腕と、後ろで結んだ紐の下でゆっくり揺れる黒く長い尾。厚い胸板の上で、やや横に引っ張られパツーンとなったエプロンの胸の部分。
「本物ぉ!」
「……本物?」
「そう! 本物の限定レオポルド来たぁあああ!!」
感極まりすぎて、私はへなへなと腰を抜かしてしまう。
その状態で、私は激しく両手を打ち鳴らした。
「いや、なんや怖いて!」
「アリス、お尻汚れちゃうなの!」
コリンが慌てて駆け寄ってきたが、それより先にレオポルドが私を助け起こす。
「……すごい」
感動のあまり、涙まで出て来た。声も指も震えている。
「三万円つぎ込んでも手に入るかどうかわからなかった限定レオポルドが、立体になってここにいる……」
私を支える腕に触れる。さらりとした獣毛が、指先に触れた。
「……あたたかい。触れる。どうしよう!?」
「アリス、嬉しいか?」
「うん! 嬉しい! すっごく!」
「なら、良かった」
「良かったのは私の方!」
きゃっきゃとはしゃぐ私たちを、コリンとパティはただ見守っていた。
「なんであんなんで喜んどるんや? 防御力は低いし、アレ職人用の服やで?」
「パティ! ボクにも同じものを出すなの!」
「え!? アンタも? サイズあったかなぁ」
「ボクもあれを着て、アリスに喜んでもらいたいなの! 早く出すなの!」
「そんなん急に言われても! なんなんや、もう!」
「つまり。この国に来る前に、国元で食事処をやる予定だったと」
「そう」
「レオポルドそっくりな相手と一緒に?」
「そうそう」
「で、金も用意してあとは始めるだけやったのに、それが叶わんままここに攫われてきてしまって、それを思い出して急に悲しくなったと」
「そういうこと」
私は先ほどの落ち込みと、レオポルドにエプロン着せて喜んでいた理由を、ざっくりとパティに話した。
勿論、ゲームと言っても通じないだろうから、その辺は適当に誤魔化しつつ。
(そういや、ここには攫われてきたって説明してたんだっけ。やば、設定忘れかけてた)
「まぁ、パティとレオポルドのおかげで、気が済んだよ。あの服、買うね。いくら?」
「……それ、えぇやん」
「『それ』?」
「うん。ホンマにやったらえぇんちゃうの? やろうや」
「……? 何の話?」
「せやから、レオポルドとコリンと一緒に食事処。やったらえぇんちゃう?」
「え……」
えぇええぇえ!?
(ひぇ!?)
その艶めかしい身躯から、私は慌てて目を逸らす。
「ちょぉおい!? アンタ、もうちょい気ぃ使えや! ここ、女の子二人おるんやで!?」
パティの苦言を気に掛ける様子もなく、レオポルドの着替える音は続く。
「アリス」
やがて音が止まると同時に、彼は私の名を呼んだ。
「これでどうだ?」
恐る恐る、声の方を振り返る。
(あ……!!)
いた。
イベント予告で見たのとそっくりな服装の、レオポルドが目の前に立っていた。
「限定レオぼッ、ゴホッゴホゴホッ!!」
あまりの衝撃に、勢いよく身を起こしむせる。
「アリス、大丈夫か」
「だ、だいじょ……」
ベッドから降り、震える足でレオポルドの周りをゆっくり一巡する。
「すごい、360度眺められる……!」
「アリス」
薄いシャツから透けて見える隆々とした体躯のライン、引き締まったウエストと、腕まくりした白いシャツから覗く逞しい腕と、後ろで結んだ紐の下でゆっくり揺れる黒く長い尾。厚い胸板の上で、やや横に引っ張られパツーンとなったエプロンの胸の部分。
「本物ぉ!」
「……本物?」
「そう! 本物の限定レオポルド来たぁあああ!!」
感極まりすぎて、私はへなへなと腰を抜かしてしまう。
その状態で、私は激しく両手を打ち鳴らした。
「いや、なんや怖いて!」
「アリス、お尻汚れちゃうなの!」
コリンが慌てて駆け寄ってきたが、それより先にレオポルドが私を助け起こす。
「……すごい」
感動のあまり、涙まで出て来た。声も指も震えている。
「三万円つぎ込んでも手に入るかどうかわからなかった限定レオポルドが、立体になってここにいる……」
私を支える腕に触れる。さらりとした獣毛が、指先に触れた。
「……あたたかい。触れる。どうしよう!?」
「アリス、嬉しいか?」
「うん! 嬉しい! すっごく!」
「なら、良かった」
「良かったのは私の方!」
きゃっきゃとはしゃぐ私たちを、コリンとパティはただ見守っていた。
「なんであんなんで喜んどるんや? 防御力は低いし、アレ職人用の服やで?」
「パティ! ボクにも同じものを出すなの!」
「え!? アンタも? サイズあったかなぁ」
「ボクもあれを着て、アリスに喜んでもらいたいなの! 早く出すなの!」
「そんなん急に言われても! なんなんや、もう!」
「つまり。この国に来る前に、国元で食事処をやる予定だったと」
「そう」
「レオポルドそっくりな相手と一緒に?」
「そうそう」
「で、金も用意してあとは始めるだけやったのに、それが叶わんままここに攫われてきてしまって、それを思い出して急に悲しくなったと」
「そういうこと」
私は先ほどの落ち込みと、レオポルドにエプロン着せて喜んでいた理由を、ざっくりとパティに話した。
勿論、ゲームと言っても通じないだろうから、その辺は適当に誤魔化しつつ。
(そういや、ここには攫われてきたって説明してたんだっけ。やば、設定忘れかけてた)
「まぁ、パティとレオポルドのおかげで、気が済んだよ。あの服、買うね。いくら?」
「……それ、えぇやん」
「『それ』?」
「うん。ホンマにやったらえぇんちゃうの? やろうや」
「……? 何の話?」
「せやから、レオポルドとコリンと一緒に食事処。やったらえぇんちゃう?」
「え……」
えぇええぇえ!?