「いやぁ、思た通りや。えぇ金になった」
さっきまでの緊張感は完全に消え去り、パティはほくほく顔で歩いている。
「あの店は、一般に流通せんもんを買ったり売ったりしとるんや。あの魔石は普通やないからな」
「そうなんだ」
「あ、そっちの割れとる方は、いつもんトコ持ってってえぇで」
「わかった」
こういう時、事情通のパティがいてくれたのは心強い。
私だけなら何も考えず大通りの換金所に持って行っていただろう。いつもの天秤で重さだけ量られて、安く買い叩かれていたに違いない。
換金に行く前に、パティにあれを見せたのは正解だった。
正解だったのだが……。
「パティ」
「なんや」
私はパティに向けて、てのひらを出す。
パティが自分の手を重ねてきたので、私はぺしっと払いのけた。
「違うでしょ? さっき換金した魔石は、依頼とは関係ないところで私がレオポルドやコリンと共に手に入れたものだよね? どうしてパティが懐に入れちゃってるかな?」
「い、いや、ほら、これは……。なぁ? 共有財産というかなんちゅーか……、ウチらパーティの仲間やん? 」
「仲間? 借金返すまでは逃がさん、って縛り付けてただけよね? お金、こっちに渡して」
「ま、まぁまぁ、細かいこと言わんと。せや、今日はコリンの歓迎会ってことで、みんなでこの金でパーッと美味しいモンでも……」
「レオポルド」
私が名を呼ぶと、レオポルドの指先にシャキッと長い爪が出現した。ペリドット色の瞳が冷たくパティを見下ろす。
「……お前はアリスの敵か?」
「敵ちゃう! 味方!! 超仲良しっ!!」
「なら、アリスを困らせるな」
「分かった! 分かったって!! もう、怖いなぁ!」
パティはしぶしぶと言った風に、先ほど換金所で受け取った紙幣を私に突き出す。
私は受け取り金額を確認すると、パティを見た。
「借金、いくらだっけ?」
「5万8300カヘ……」
私は受け取った34万カヘから8万カヘを彼女に渡した。
「コリンの服代と、これまでいろいろ教えてくれたからそのお礼も含めて。それから餞別とね」
「え? 餞別!? ちょちょちょい、待ちぃや! あんたら、どっか行ってまう気か?」
「うん」
焦った様子でパティが私の両肩を掴む。
「うん、やないて! ウチがおらんかったら、アリス、あんた困るやろ? なっ?」
確かに分からないことはまだまだ多い。しかし、この世界で生きる基本的なことはこの10日間でなんとなく学んだ。
ただパティと過ごした10日間は、借金という負い目が常に付きまとい、快適とは言い難かった。うっすらと出来てしまった上下関係を、少々疎ましく感じていた。
「頑張って、私たちだけで何とか生きていくよ。パティだってさ、私たちがいない方が自由に好きな場所で商売できるでしょ?」
「せ、せやけど……」
「だから、ここでバイバイ。私たちは魔石ハンターとして生きていくよ。今までありがとうね」
「アリス……」
さっきまでの緊張感は完全に消え去り、パティはほくほく顔で歩いている。
「あの店は、一般に流通せんもんを買ったり売ったりしとるんや。あの魔石は普通やないからな」
「そうなんだ」
「あ、そっちの割れとる方は、いつもんトコ持ってってえぇで」
「わかった」
こういう時、事情通のパティがいてくれたのは心強い。
私だけなら何も考えず大通りの換金所に持って行っていただろう。いつもの天秤で重さだけ量られて、安く買い叩かれていたに違いない。
換金に行く前に、パティにあれを見せたのは正解だった。
正解だったのだが……。
「パティ」
「なんや」
私はパティに向けて、てのひらを出す。
パティが自分の手を重ねてきたので、私はぺしっと払いのけた。
「違うでしょ? さっき換金した魔石は、依頼とは関係ないところで私がレオポルドやコリンと共に手に入れたものだよね? どうしてパティが懐に入れちゃってるかな?」
「い、いや、ほら、これは……。なぁ? 共有財産というかなんちゅーか……、ウチらパーティの仲間やん? 」
「仲間? 借金返すまでは逃がさん、って縛り付けてただけよね? お金、こっちに渡して」
「ま、まぁまぁ、細かいこと言わんと。せや、今日はコリンの歓迎会ってことで、みんなでこの金でパーッと美味しいモンでも……」
「レオポルド」
私が名を呼ぶと、レオポルドの指先にシャキッと長い爪が出現した。ペリドット色の瞳が冷たくパティを見下ろす。
「……お前はアリスの敵か?」
「敵ちゃう! 味方!! 超仲良しっ!!」
「なら、アリスを困らせるな」
「分かった! 分かったって!! もう、怖いなぁ!」
パティはしぶしぶと言った風に、先ほど換金所で受け取った紙幣を私に突き出す。
私は受け取り金額を確認すると、パティを見た。
「借金、いくらだっけ?」
「5万8300カヘ……」
私は受け取った34万カヘから8万カヘを彼女に渡した。
「コリンの服代と、これまでいろいろ教えてくれたからそのお礼も含めて。それから餞別とね」
「え? 餞別!? ちょちょちょい、待ちぃや! あんたら、どっか行ってまう気か?」
「うん」
焦った様子でパティが私の両肩を掴む。
「うん、やないて! ウチがおらんかったら、アリス、あんた困るやろ? なっ?」
確かに分からないことはまだまだ多い。しかし、この世界で生きる基本的なことはこの10日間でなんとなく学んだ。
ただパティと過ごした10日間は、借金という負い目が常に付きまとい、快適とは言い難かった。うっすらと出来てしまった上下関係を、少々疎ましく感じていた。
「頑張って、私たちだけで何とか生きていくよ。パティだってさ、私たちがいない方が自由に好きな場所で商売できるでしょ?」
「せ、せやけど……」
「だから、ここでバイバイ。私たちは魔石ハンターとして生きていくよ。今までありがとうね」
「アリス……」