「レオポルド!?」
 反射的に立ち上がり、戦闘の行われていた場所へ目を向ける。と同時に、私も息を飲んだ。
(何、あれ!)
 群れなすラティブ全ての体が、金色の光に覆われていた。先ほどコリンの姿になった個体と同じように。
 やがてそれらは光の塊へと変化すると、弾丸のようにこちらを目指して飛んできた。
「えっ、えっ、何!?」
「避けろ、アリス!」
「アリス!」
 すぐ側から可愛らしい声がしたかと思うと、兎型少年が立ち上がり、私を庇うように前に立つ。
 両手を大きく広げ、光弾に対峙した。
「コリン! 危ない!」
「大丈夫なの!」
 光の弾丸と化した残りのラティブの群れが、コリンへ一斉に襲い掛かった。
「ふぁあああっ!?」
 コリンは驚いたような悲鳴を上げる。だがその声に苦痛は混じっていない。
 やがて全ての光は、コリンの中へと吸収されてしまった。
「だ、大丈夫?」
「うん、ボク平気なの」
 そう言うと、コリンは愛らしく笑った。
(ん゛ッ!!)
 そのいとけなくも可愛らしい表情に、思わず言葉が詰まる。
(守りたい、この笑顔! いや、今、守ってもらったばかりだけど!!)

「アリス」
 気が付けば隣にレオポルドが立っていた。
「怪我はないか?」
「うん、平気」
「良かった」
 言ったかと思うと、レオポルドは広い胸の中へ私をかき抱く。
(わっ、わっ!)
「必ず守ると言っておきながら、アリスを危険な目に遭わせてしまった。すまない」
「う、ううん」
 ゆったりと包み込む、苦痛を与えない程度に加減した力強い抱擁。大切にされてる、と感じた。
 若草の様な芳香に、私は思わずうっとりと瞼を閉じる。
(ん?)
 ぽふっという柔らかい感触と共に、背中が別のぬくもりに包まれる。
 振り返れば、むっとした表情をレオポルドに向けているコリンがいた。
「アリス、この子は?」
「えっと、さっきの兎型魔獣(ラティブ)?からこの姿に変わった子で、名前は」
「コリンなの!」
 私が言う前に、コリンは自ら名乗る。
「自分はレオポルドだ」
 言って、レオポルドは私を見る。
「この姿、自分と同じ存在なのだな」
「うん、そう」
「なるほど。コリン、自分たちは仲間だ」
 レオポルドがコリンに目を向け微笑むと、コリンは小首をかしげた。
「仲間?」
「あぁ、共にアリスを守るという宿命を得た」
(そうなの!?)
「アリスを守る……仲間!」
 コリンの目が輝く。
 そして、先ほど私に向けていたのと同じくらい、屈託のない笑顔をレオポルドに向けた。
「それなら仲良しなの! よろしくなの、レオポルド!」
「あぁ、こちらこそ頼む、コリン」
 笑顔を交わす二人を見て、私はほっとする。
 するとじわじわと喜びが湧きあがってきた。
(魔獣人、二人目GETぉお!! ワイルドしなやか筋肉系に続いて、ラブリィショタ系がやってまいりましたよ!)
 私は両手を広げ、コリンに向き直る。
「ようこそ、コリン! これからは私と一緒にいてくれる?」
「勿論なの、アリス!」
 コリンもその心を表すかのように、私に向かって大きく両腕を広げた。
 そこで、ふと違和感に気付く。
(あれ? コリンのこの姿……、改めて見ると……)

 全裸。

(そうだったー!! レオポルドも魔獣人化した時は、服を身に着けてなかった!!)
全身が獣毛に覆われているため、生々しさはあまりないものの。
「アリス!」
「ちょちょちょ、ストップ、コリン!!」
「大好きなの!」
「ギャアアアア、待って! 服、服、服――っっ!!」
「アリス! 自分の服をこの子に!」
「レオポルドは脱がないで! ちゃんと着てて! それより、ひとっ走りパティの所へ行って、事情を話して服もらって来てーー!!」