声が出ない代わりに、首元に大きな衝撃が奔り、爆発音が聞こえた。
何かが爆発したのか?
不意に、体がふわっと持ち上がる感覚があった。
誰だろう。
誰かが俺を起こしている。
魔物が起こすにしては、随分と丁寧な起こし方だ。
視界はまだ鮮明ではない。
ぼんやりとした景色はオレンジ色で覆われていた。まるで炎の中に居るような。
徐々に視界を取り戻していくと、そのオレンジが本当に炎であることが解った。
眼前の火が開けると、四匹の魔物がこちらを見ていた。
それは先ほどまでネイアに危害を加えようとしていた連中だった。
全員が驚愕の表情をしている。突然起き上がったからだろうか。
俺は手を前に出し、デコピンをするように中指を弾いた。
「えぎっ!」
どこかから悲鳴ともとれぬ声が聞こえた。
ああ、目の前の奴か。
声の主以外の奴らがそいつに駆け寄る。
どうしてだ?
なんで奴の頭から血を流しているんだ?
俺がやったのか?
「なんだあれは!」
魔物たちが喚き始める。
「体の色が変わっている! それに浮いているぞ!」
「あの魔人いったい何者なんだ!」
体の色?
俺は目線だけで自身の腕を見た。
肌の色は焦げ茶色に変色していた。その肌の所々に血管の様な亀裂が入り、オレンジ色の光が漏れ出ている。
まるでマグマだ。自分の体がマグマになったようだ。変色と共に、腹の傷も無くなっていた。
スイッと前に出る。
ああ、俺、今、浮いているのか。
へえ。
楽そうだな。移動。
実際体も凄く軽い。
「全員、ありったけをぶっ放せ!」
そう言って魔物たちが銃を構える。
銃声が聞こえる。
——傷痕記録。
頭の中に何か声が流れたかなと思ったら、腕が勝手に上がっていた。
目の前の空間に直径5メートルを超える円形の漆黒の穴がぽっかりと開いた。
そこに弾丸が全て吸い込まれていく。
すべてを飲み込むと、穴は一瞬で消え去った。
——傷痕出血。
また頭の中を声が通り過ぎる。そして今度は掌を開いた状態で、下ろしていた。
先ほどのでかい穴が敵の頭上に現れて、弾丸の雨を降らせる。
敵はそれだけで大半が死に、壊滅状態になった。
数人残った魔物たちが慌てている。
戦車の主砲がこちらを向く。
主砲が咆哮を上げ、同時に弾が飛んでくる。
狙い過たず、まっすぐ俺に向かってくる。
このままじゃあ、直撃だ。
拳を引いて、そのまま前に突き出す。
掌底突き。
筒状の弾丸が当たると同時に指が曲がった。
折れたんじゃあない。
掴んだのだ。高速で飛んでくる鉄の塊を。
パカッと開く前に、指はとてつもない握力で弾を圧壊し、ただの鉄屑へと変貌させた。
爆発は起きない。
それを見ていた魔物たちは背を向けて逃げ出した。戦車も後退を始める。
——魔剣召喚。
あれ?
魔剣は既に出していなかったか?
しかし俺の手が掴んだのは、魔剣だった。
魔剣は魔剣でも、本物の。俺が扱っていた魔剣はおもちゃだったのかと思う程だった。
4メートルを超えるその巨剣の周りには陽炎がゆらゆらと揺れておりは、まさしく魔剣と言う名を冠するにふさわしいものだった。
しかし俺は、その剣を振るうことなく、すぐさま投擲した。
逃げ行く敵の目の前に突き刺さる。と、同時にその空間が突然に歪んだ。剣を中心に球形にぐにゃぐにゃと捻じ曲がり、その大きさは二階建ての一軒家を丸のみにしても足りない程だった。
断末魔も聞こえないまま、彼らと戦車はその歪みに飲み込まれてしまった。
魔剣の周囲に現れた歪みは、地面までもさらうと、何事もなかったように元の風景を見せた。空中に残った魔剣は、新しく歪みを作り、その中へ入っていった。魔界へ戻ったのだろう。
何かが爆発したのか?
不意に、体がふわっと持ち上がる感覚があった。
誰だろう。
誰かが俺を起こしている。
魔物が起こすにしては、随分と丁寧な起こし方だ。
視界はまだ鮮明ではない。
ぼんやりとした景色はオレンジ色で覆われていた。まるで炎の中に居るような。
徐々に視界を取り戻していくと、そのオレンジが本当に炎であることが解った。
眼前の火が開けると、四匹の魔物がこちらを見ていた。
それは先ほどまでネイアに危害を加えようとしていた連中だった。
全員が驚愕の表情をしている。突然起き上がったからだろうか。
俺は手を前に出し、デコピンをするように中指を弾いた。
「えぎっ!」
どこかから悲鳴ともとれぬ声が聞こえた。
ああ、目の前の奴か。
声の主以外の奴らがそいつに駆け寄る。
どうしてだ?
なんで奴の頭から血を流しているんだ?
俺がやったのか?
「なんだあれは!」
魔物たちが喚き始める。
「体の色が変わっている! それに浮いているぞ!」
「あの魔人いったい何者なんだ!」
体の色?
俺は目線だけで自身の腕を見た。
肌の色は焦げ茶色に変色していた。その肌の所々に血管の様な亀裂が入り、オレンジ色の光が漏れ出ている。
まるでマグマだ。自分の体がマグマになったようだ。変色と共に、腹の傷も無くなっていた。
スイッと前に出る。
ああ、俺、今、浮いているのか。
へえ。
楽そうだな。移動。
実際体も凄く軽い。
「全員、ありったけをぶっ放せ!」
そう言って魔物たちが銃を構える。
銃声が聞こえる。
——傷痕記録。
頭の中に何か声が流れたかなと思ったら、腕が勝手に上がっていた。
目の前の空間に直径5メートルを超える円形の漆黒の穴がぽっかりと開いた。
そこに弾丸が全て吸い込まれていく。
すべてを飲み込むと、穴は一瞬で消え去った。
——傷痕出血。
また頭の中を声が通り過ぎる。そして今度は掌を開いた状態で、下ろしていた。
先ほどのでかい穴が敵の頭上に現れて、弾丸の雨を降らせる。
敵はそれだけで大半が死に、壊滅状態になった。
数人残った魔物たちが慌てている。
戦車の主砲がこちらを向く。
主砲が咆哮を上げ、同時に弾が飛んでくる。
狙い過たず、まっすぐ俺に向かってくる。
このままじゃあ、直撃だ。
拳を引いて、そのまま前に突き出す。
掌底突き。
筒状の弾丸が当たると同時に指が曲がった。
折れたんじゃあない。
掴んだのだ。高速で飛んでくる鉄の塊を。
パカッと開く前に、指はとてつもない握力で弾を圧壊し、ただの鉄屑へと変貌させた。
爆発は起きない。
それを見ていた魔物たちは背を向けて逃げ出した。戦車も後退を始める。
——魔剣召喚。
あれ?
魔剣は既に出していなかったか?
しかし俺の手が掴んだのは、魔剣だった。
魔剣は魔剣でも、本物の。俺が扱っていた魔剣はおもちゃだったのかと思う程だった。
4メートルを超えるその巨剣の周りには陽炎がゆらゆらと揺れておりは、まさしく魔剣と言う名を冠するにふさわしいものだった。
しかし俺は、その剣を振るうことなく、すぐさま投擲した。
逃げ行く敵の目の前に突き刺さる。と、同時にその空間が突然に歪んだ。剣を中心に球形にぐにゃぐにゃと捻じ曲がり、その大きさは二階建ての一軒家を丸のみにしても足りない程だった。
断末魔も聞こえないまま、彼らと戦車はその歪みに飲み込まれてしまった。
魔剣の周囲に現れた歪みは、地面までもさらうと、何事もなかったように元の風景を見せた。空中に残った魔剣は、新しく歪みを作り、その中へ入っていった。魔界へ戻ったのだろう。